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クラシック名録音106究極ガイド
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嶋護著
ステレオサウンド刊(
SS選書)
ISBN978-4-88073-259-6



オーディオ評論家の嶋護さんが、ご自身のコレクションの中から「名録音」と誰にでも推薦できる106枚のレコードを集めた、見ているだけで楽しくなってくるような本です。画像でも分かるように、まず表紙には20枚の「レーベル」の写真がデザインされています。これと同じレイアウトで裏表紙にもやはり20枚分の「レーベル」を見ることができます。あ、念のため、「レーベル」という言葉は、ここにあるようなレコードの真ん中の部分の表と裏に貼り付けられた「ラベル」のことを指し示すもので、それが転じて「レコード会社」を意味するものになったのだ、というは、今では常識になっています。
これが本文になると、それぞれのレコードに1ページ半ずつを与えて、ジャケットの表と裏の写真が紹介されることになります。「表」はともかく、「裏」、つまり「ライナー」にあたる部分まできちんと見せてもらえるのには、とても嬉しくなってしまいます。これは、「物」としてのLPレコードを懐かしむとともに、もしかしたらそこに記載されてある「ライナーノーツ」の文章まで読むことが出来るほどの解像度で印刷されていますから、文字情報としての価値まで付加されているのですから。
「レーベル」だの「ジャケット」だのと、もっぱら現在では本来の意味ではもはやほとんど死語と化している言葉を羅列してきましたが、ここで「名録音」として選ばれている106点の中身は、105点までが、その様な言葉が属性としてついて回る「LPレコード」であるという事実に、ショックを受ける人は少なくないはずです。もちろん、それらは全てアナログ録音によって磁気テープに保存された音源ばかり、デジタル録音によるCDなどは、わずか1点しか含まれていません。これが何を意味するのか、それは、著者がそれぞれの「レコード」について述べている、コメントを詳細に読んでいけば、自ずと分かってくることでしょう。
著者である嶋さんの名前は、普段はオーディオ雑誌をきちんと読んだりはしませんから、初めて知りました。と思っていたら、実際はショルティの「リング」が全曲SACDされた時に、その豪華なボックスに添付されていた解説書の中で目にしていたのですね。そこで彼が書いていたのは、それまでは漠然としたイメージしかなかったDECCAの録音チームがとっていたマイクアレンジなどの技法の詳細でした。こんなに具体的なレポートを日本語で読んだのは、これが初めて、なにしろそこでは、ゴードン・パリーが使用した録音用のテープのことまで(新しい製品には問題があったので、使用済みの以前のテープをかき集めて、消磁して使ったとか)事細かに述べられていたのですからね。
そんな嶋さんの知識は、この本の中でも遺憾なく発揮されています。それぞれの録音にマイクが何本、どんな配置で使われたか、などということが、まるで見てきたようにリアルに語られているのには、驚かされます。そして、なによりも素晴らしいのは、彼が取り上げたレコードの録音を語る時の語彙の豊富さです。そこからは、そんなにすごいものなら、ぜひ聴いてみたいものだと確実に思わせる「力」が感じられます。それは、あまりに言葉遣いが巧みなため、意味が分からなくなってしまうという文章の欠点を補ってあまりあるものでした。
さいわい、この中には何枚か手元にあるものも含まれていますから、実際に彼が味わった「感動」を共有することは可能です。しかし、それは多くの読者にとってはまず不可能なはず、もし、これらのLPの中で現在CDSACDとして入手できるもののリスト、そして、それがオリジナルとはどの程度の隔たりがあるのか、もしくはないのか、といったデータがありさえすれば、この本が単なるノスタルジックな自己満足だけに終わってしまうという残念なことにはならなかったはずです。

Book Artwork © Stereosound
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by jurassic_oyaji | 2011-07-16 20:09 | 書籍 | Comments(0)