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BEETHOVEN/Symphonies nos. 7 & 8
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Jan Wilem de Vriend/
The Netherland Symphony Orchestra
CHALLENGE/CC72500(hybrid SACD)




デ・フリエントのベートーヴェン・ツィクルス第3弾は、「7番」と「8番」のカップリングです。ベートーヴェンの交響曲と言えば、かつては「5番」の人気が突出していたものですが、今はどういうランキングになっているのでしょうね。少なくとも、「7番」が以前ほどの低ランクに甘んじていることはなく、かなり上位に頑張っていることは間違いないはずです。なにしろ、「のだめ」以後は、この曲に対する認識がガラリと変わってしまいましたからね。
しかし、「8番」に関しては、今までにそんな晴れがましい扱いがあったことはおそらくないはずですので、相変わらず下の方のランクでウジウジしているのではないでしょうか。演奏時間も短めですから、例えば、どこかのオーケストラが演奏会の曲目を決めるような時には、この「8番」をメインプログラムに据えることはまずないはずです。かといって、いやしくもベートーヴェンの交響曲を前プロにするのもなんだかなぁ、ということで、なかなか扱いの難しい立場に立たされているのですよ。ですから、全集を演奏するような機会でもないと、なかなか日の目を見ないという、ちょっとかわいそうな境遇に甘んじているのかも知れません。
デ・フリエントとネーデルランド交響楽団のベートーヴェンは、今まで通り、ピリオド奏法を極限まで取り入れたモダン・オーケストラによって演奏されています。ですから、響きはあくまでコンパクト、フレージングもいかにも軽やかに運ばれています。そんな中では、「7番」のリズミックな一面はより軽快に伝わってくることになり、この曲本来の身の丈にあったチャーミングな仕上がりとなっています。木管楽器はソリスティックな部分でもしっかり弦楽器に寄り添っているのに対して、ピリオド楽器をそのまま使った金管はなんとも刺激的な音色で迫るものですから(特に、スケルツォのトリオでのホルンのゲシュトップ)、その対比はちょっとユーモラスに聞こえたりもします。「のだめ」でこの曲を知った人などは、多分全くイメージが覆されてしまうことでしょう。
おそらく、そういうシチュエーションで演奏される時、「8番」は普通のモダン・オケで演奏される時とは全く別の顔を見せてくれることを、デ・フリエントは明らかにしたかったのではないでしょうか。ここでは、あたかも彼がこの曲につきまとう「軽い」イメージを払拭するために全力を尽くしているかのように感じられてしまうのです。
そもそもこの曲は、序奏なしでいきなりメインテーマから曲が始まるという、「5番」や「6番」と同じような明快なオープニングを持っているのですが、そのテーマの最初の4小節が、なんとも粋なフレージングで歌われていることに、聴くものは軽いショックを受けるはずです。指揮者は、たったこれだけのことで、まずこの曲のイメージをガラリと変えてしまうことに成功しているのですね。ここで、このテーマのきっちりとした提示を聴いた後では、普通は冗漫だとされているその後の展開が、なんとも味のある確かな意味を持つことにも気づくはずです。今まで単なる「つなぎ」にしか聴こえなかったものが、実は恐ろしいほどの説得力を持って音楽全体の「力」となっていたのですね。
そんな、しっかりとしたフォルムを備えていることを確認したあとで、あのフィナーレでのしつこすぎるエンディングのアコードの連打を体験すると、それは間違いなく次の交響曲への準備が整ったことへの高らかな宣言に聴こえることでしょう。そう、ベートーヴェンはこの曲を作る時に、後に「第9」で見せることになる前衛的な手法を、あらかじめ模索していたのではないか、そんな思いさえ、この刺激的な演奏を聴く時にはよぎってくるのです。木を切ったりはしませんが(それは「与作」)。
ですから、続く「第9」がどんな仕上がりか、とても楽しみですね。

SACD Artwork © Challenge Records Int.
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by jurassic_oyaji | 2011-07-20 19:44 | オーケストラ | Comments(0)