おやぢの部屋2
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Gershwin Concert
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Jeffrey Siegel(Pf)
Evgeny Svetlanov
Swedish Radio Symphony Orchestra
WEITBLICK/SSS0123/0124-2




ガーシュウィンの曲ばかりによるコンサートのライブ録音、おそらく全部の曲目が収録されているのでしょう、トータル1時間38分の2枚組CDです。演奏しているのがあのスヴェトラーノフ、そしてオーケストラは彼の最晩年、1995年から2000年の間にもっとも密接な関係にあったスウェーデン放送交響楽団です。コンサートが行われたのは1996年9月のストックホルム、最初の曲は「パリのアメリカ人」ですが、「パリ」とも「アメリカ人」とも全く無縁なアーティストとロケーションになりますね。夏休みも終わってますし(それは「バケーション」)。
そう、この録音は、ロシアを代表する指揮者によるガーシュウィン、まさにミスマッチの極みではあるのですが、それが逆にガーシュウィンの思ってもみなかったような一面を教えてくれるのですから、これはなかなか得難い経験です。
スヴェトラーノフがガーシュウィンを好んで演奏したというのは有名な話ですが、おそらく彼はミュージカルやジャズの作曲家としてではなく、きちんとした「クラシック」の作曲家として、ガーシュウィンのことをとらえていたはずです。ですから、それを演奏する時には、容赦なく彼の資質をこれらの作品に注ぎ込むことになりました。「パリのアメリカ人」は、さしずめ「交響詩」としてのアプローチでしょうか。ほとんど冗談とも思えてしまう鈍くさいテンポに乗って繰り広げられるのは、パリという洗練された都市ではなく、まるでロシアの広大な大地を舞台にしたのかと思えるほどの雄大なドラマでした。圧巻は、途中で聞こえてくる、本来だったら哀愁を帯びたブルースを奏でるはずのトランペットのソロでしょう。とてつもないクレッシェンドを伴うそのトランペットは、まるで地平線の彼方から聞こえてくるような壮大な迫力を持っていました。
ピアノ協奏曲も、「ジャズ」や「ブルース」といった素材には、指揮者はなんの関心も寄せてはいないようでした。ガーシュウィンが、自費でオーケストラを雇ってまでして極めたかったオーケストレーションの極意を、スヴェトラーノフは丹念になぞろうとしています。もちろん、そこにはロシアの巨匠たちの仕事も重ね合わせられることになります。かくして、「in F」などといういかにもライト・ミュージック的な表記のあるこの曲は、チャイコフスキーにもひけをとらない立派なピアノ協奏曲として生まれ変わることが出来ました。なんたって、第1楽章が終わったところでものすごい拍手が起こるのですからね。アダージョ楽章からわき上がってくる深い情念には、思わず涙ぐんでしまいそうになります。ただ、いかんせん、ピアニストがそんな指揮者の思いを完全には受け取れていなかったことが、悔やまれます。いや、第2楽章まではよくやっていました。しかし、フィナーレになったらついいつもの軽薄なテンポが出てしまったのです。確かにこのソロは「ゆっくり」弾く方が逆に難しいのかもしれませんが、これがライブの怖さなのでしょう。もっとも、打楽器奏者などもかなり苦しそうでしたから、これは仕方がなかったのかも。
「キューバ序曲」は、軽快なカリプソのリズムに乗って、一見それまでの重さを忘れてしまいそうになりますが、やはり中間部になったら「スラブ音楽」が全開でした。確かに、これはそういう深みのある音楽だったんですね。
そして、最後を締めるのは、ロバート・ラッセル・ベネットの編曲による「ポーギーとベス」を素材にした「交響的絵画」です。オリジナルとは微妙にテイストが異なり、本来のミュージカル色が薄まっている分、スヴェトラーノフとしては思い切り歌い上げることが出来たのでしょう。「Summertime」などは、なんとも格調高い仕上がりです。「I have plenty of nothing」ではバンジョーがソロ楽器としてフィーチャーされています。それがまるでバラライカのように聞こえてくるのですから、すごいものです。

CD Artwork © Melisma Musikproduktion
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by jurassic_oyaji | 2011-07-22 19:45 | オーケストラ | Comments(2)
Commented by とおりすがり at 2011-07-27 12:06 x
> おそらく全部の曲目が収録されているのでしょう
それどころか、思いっきり代表作の「ラプソディ・イン・ブルー」が抜けておりませんか?w
Commented by jurassic_oyaji at 2011-07-27 21:59
とおりすがりさま。
いや、これは「コンサートで演奏された曲が全部」という意味でして。