おやぢの部屋2
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BACH/Weihnachtsoratorium
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Ingeborg Danz(Alt), Martin Petzold(Ten)
Christoph Genz(Ten), Panajotis Iconomou(Bas)
Georg Christoph Biller/
Thomanerchor Leipzig
Gewandhausorchester
RONDEAU/ROP4034/35




バッハの「クリスマス・オラトリオ」は、バッハ作品番号ではBWV248という「一つの作品」としての扱いですが、実際には6つの作品が合体したものです。これは、クリスマスから新年にかけての6回の祝日にそれぞれ演奏されたカンタータをひとまとめにしたものなのですね。つまり、これらは、バッハのライプツィヒ時代、1734年の1225日から3日間、そして1735年の1月1日、その年の新年の最初の日曜日の1月2日、さらに顕現節である1月6日に、それぞれ演奏されたのでした。「一つの作品」を演奏するのに6晩を要するのですから、これから150年ほど経ってから作られたワーグナーの「指環」の4晩を軽く凌駕するボリュームとなっています。さすが、音楽の父(意味不明)。
ワーグナーがそれらを作曲する作業は遅々として進まず、完成までには20年以上もかかってしまいましたが、バッハの場合はそんなにはかかりませんでした。というか、メインの部分はその前の年、1733年に誕生日のお祝いのために2曲のカンタータを作った時に、すでに翌年のクリスマスにも使うことを想定しておいたのですね。もちろん、それをそのまま使うようなことはしていません。例えば、カンタータ「Tönet ihr Pauken! Erschallet, TrompetenBWV214から最初の合唱を「クリスマス・オラトリオ」第1部の最初の曲に転用する時には、ティンパニの連打に呼び出されるトラヴェルソ2本によるフレーズの頭を、十六分音符一つ分だけ遅らせています(→BWV214、→BWV248)。
これだけ周到に準備されて作られたこの作品は、したがって「他の曲からの転用が多い」という理由だけでその価値が下がることは決してありません。そもそも、ホルストの「木星」を「もののけ姫」に転用したり、自身の作品である「トトロ」をそのまま「ポニョ」に使い回した作曲家Hなどとは、バッハは格が違うのですよ。
2009年の12月に、実際にライプツィヒのトマス教会で6日かけて行われたコンサートでの、そのバッハの16代後のカントールであるゲオルク・クリストフ・ビラーは、今までのバッハの作品の録音同様、モダン楽器のオーケストラを使いながらも、ピリオド楽器に近いものを使ったり、その時代の奏法を取り入れたりと、可能な限りその「先輩」の音楽の忠実な再現を心がけています。それだけではなく、ここでは声楽についても「ピリオド・アプローチ」を試みているようでした。それは、ソプラノのソロをトマス教会聖歌隊の少年に歌わせるというユニークなアイディアでした。
別に、そういうことをやったのは彼が初めてではありません。ピリオド楽器の黎明期に、とてもピリオド楽器とは言えないようなものを使って録音されたアーノンクールとレオンハルトによるバッハのカンタータ全集では、確か少年合唱団のメンバーがソロも歌っていたはずです。それ以後、そんな試みは絶えて見かけないようになったと思っていたら、こんなところでまた出会えるとは。
実際、「クリスマス・オラトリオ」では、ソプラノ・ソロの出番は極端に少なくなっています。1人だけで歌うアリアは最後の第6部に1曲あるだけですからね。ですから、最初に演奏された時にはソリストはいなかったのではないか、と考えた結果、このようなことを行ったのかも知れません。
しかし、ダンツのようなしっかりした声のアルトが歌っている中で、ソプラノだけがか細い、はっきり言って拙い演奏を披露しているというのは、正直心地よいものではありませんでした。それでなくても、本体の合唱がいつにも増して不安定なものですから、もっぱらきっちりと端正な演奏を心がけているオーケストラの方に耳が行ってしまいます。ほんと、ヴァイオリン・ソロなどは見事なものでした。

CD Artwork © Rondeau Production GmbH
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by jurassic_oyaji | 2011-08-01 20:29 | 合唱 | Comments(0)