おやぢの部屋2
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BRAHMS/Sinfonie Nr.1
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Karl Böhm/
Berliner Philharmoniker
DG/UCGG-9021(single layer SACD)








ESOTERIC/ESSG-90053(hybrid SACD)



1959年に録音された、ベームとベルリン・フィルによるブラームスの交響曲第1番が極めつけの名演と言われる所以は、あの「暮らしの手帖のレコードショップ」で、「最高の演奏」という評価を得ているからです。
それによると、このベームのレコードは、演奏は間違いなく最高なのですが、国内盤のプレスが劣悪で、総合では「2位」に甘んじていました。当時、SACDで発売されていれば、間違いなく「1位」になっていたことでしょう(ありえない!)。
そんな、待望のSACDが、今回なぜか2種類同時にリリースされました。一つは、ユニバーサルから出た、2011年にエミール・ベルリナー・スタジオで制作されたDSDマスターを使用したシングル・レイヤー盤(4500円)、そしてもう一つはエソテリックから出た、杉本一家さんのマスタリングによるハイブリッド盤(3300円)です。
そこで、なぜこんな不思議なことが起こってしまったかについてはあえて触れず、この2種類の「商品」がどの程度違うのかを、客観的に比較してみましょう。
両者は、共に明らかにCDとは異なる次元の、まさにSACDならではの音である点は共通しています。例えば、第1楽章冒頭では、コントラバスの低音は豊かに響き、高音のヴァイオリンは突き抜けるような音圧を誇る間を縫って、木管楽器が彩りを添えるというスケールの大きい立体的な音場に圧倒されます。しかし、それぞれの盤を比較してみると、そこには予想をはるかに超えた違いが存在していることに、正直唖然とさせられてしまいます。
まず、コントラバスの低音は、エソテリック盤の方がはるかに芯のある、引き締まった音に聴こえます。まさに、コントラバスがパートとして一丸となってこの部分を盛り立てているのがよくわかります。ユニバーサル盤では、ただ低い音が鳴っているな、というぐらいの感じ、そこからは奏者の顔は全く見えては来ません。ヴァイオリンの高音も、全く違います。そもそもこの音源であるマスターテープの劣化もあるのでしょうか、共にかなり硬めの音になってしまっているのは同じなのですが、エソテリック盤ではそこにほんのりとみずみずしさのようなものが加わっているのに対し、ユニバーサル盤では、その硬さだけがそのまま強調されたような、ちょっと長く聴き続けるには忍耐を必要とする音になってしまっているのですね。それは、第4楽章の最後のクライマックスになるとさらに顕著になってきます。エソテリック盤であれば、フォルテシモの渦の中に心地よく埋もれていられるものが、ユニバーサル盤では、そのヴァイオリンの、殆ど拷問に近い乾ききった音のために、早く終わってほしいという辛さだけが感じられてしまうのです。
つまり、「暮しの手帖」風に言ってしまえば、ここでのお買い得はなんと言ってもエソテリック盤ということになりますね。それに対してユニバーサル盤は、値段が高いにもかかわらず、いいところはなにもありません。
マスタリングというのは非常にデリケートな作業なのでしょう。全く同じ音源であるにもかかわらず、これだけの違いが出てしまうのですからね。そもそもユニバーサル盤の「エミール・ベルリナー・スタジオ」という、エンジニア個人の名前が表に出て来ない言い方が気になります。まさかダンサーの養成所ではないでしょうが(それはバレリーナ・スタジオ)同じ所がマスタリングを行った1962年のカラヤン盤は、オーケストラ、録音会場、エンジニアが全く同じなのに、こんなひどい音ではありませんでした。
そこへ行くと、エソテリック盤ではきちんと杉本さんの名前を出していますから、安心できます。得意げに「こっちの方が音がいいのは当たり前」と威張っている杉本さんの顔が目に浮かぶようです。
エソテリック盤のライナーで諸石さんが気にしていたフルート奏者は、ニコレでもツェラーでもなく、おそらくフリッツ・デムラーです。

(10/17追記)「Incomplete List of J. Galway in Orchestra」のKさんより、フルート奏者はマティアス・リュッタースだとのご指摘がありました。

SACD Artwork © Deutsche Grammophon GmbH, Esoteric Company
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by jurassic_oyaji | 2011-08-03 21:51 | オーケストラ | Comments(4)
Commented by @aka at 2011-08-04 09:37 x
こんにちは。@aka と申します。
今回のベームのユニバーサルとエソテリックの SACD 比較、とても参考になりました。
ところで、SACD というとそれなりにオーディオをやっている人しか聞きませんよね。少くとも、ミニコンポで SACD をかけられる機種を私は知りません。従って、jurassic_oyaji さんはそれなりのオーディオ・システムをお持ちのことと推察します。
もし、よければ、どのようなオーディオ・システムで音楽を聞いていらっしゃるのかブログの記事にして頂けないでしょうか? というのも、オーディオ・システムの素性が分かると音の傾向も分かることがあるからです。本文で言えば、ユニバーサル盤の低音が「鳴っているような」と「共にかなり硬めの音になってしまっている」という表現が気になっています。後者では、柔らかめに鳴るスピーカーを使って「硬め」に聞こえるのと、もともと硬めになるスピーカーを使っていて「硬め」に聞こえるのとでは大きく違うと思うのです。その判断の依り代が欲しく、どの様なオーディオ・システムをお使いなのか伺う次第です。
Commented by Zauberfloete at 2011-08-04 11:34 x
始めまして。
この演奏、私も大好きでブログに採り上げたことがあります。
http://zauberfloete.at.webry.info/200610/article_20.html
この時、ある方より、このソロはリュッタースが吹いていると教えてくれました。私自身、デムラーの音は知らないのですが・・。
Commented by jurassic_oyaji at 2011-08-04 21:33
@asaさん、こんにちは。
私の再生装置は、特に高級なものではありませんが、バランスは良いのではないかと自負しています。硬いものは硬く、柔らかいものはきちんと柔らかく再生してくれます。
Commented by jurassic_oyaji at 2011-08-04 21:37
Zauberfloeteさん、はじめまして。
ブログ拝見しました。
エソテリックのライナーで諸石さんが「ニコレは59年8月に退団した」と書いていたので、消去法でデムラーだと思いました。私も、実際に聴いたことはありませんが、あんな感じの音だという噂を聞いていましたので。