おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
Ray of Hope
c0039487_20315838.jpg




山下達郎
MOON/WPCL-10964



山下達郎がDJを務めるラジオ番組「サンデー・ソングブック」は、もう何十年も続けて放送されている長寿番組です。今でこそ民放FM局からのオンエアですが、そもそもはNHK-FMで放送されていたものを、そのまんま民放にスライドさせたという驚くべき経歴を持っているのは、始まった時からすでに確固としたポリシーが明確に打ち出されていたことの証しなのでしょう。
そんなNHK時代からのファンですから、この番組を毎週「エアチェック」して聴くのはもはや習慣と化しています。しかし、あの3月11日の大震災の直後、3月13日のオンエアのときは、それどころではありませんでした。なにしろラジオというラジオは、通常番組は全てキャンセルして、一日中避難生活を送るために必要な情報を流し続けていたのですからね。それは日本全国同じことだったようで、結局この日に放送される分は完全にお蔵入りになってしまったようでした。
「被災地」では、そんな状態はその後もまだまだ続くことになるのですが、キー局のある東京あたりでは、次の週からは何事もなかったかのように通常の番組が復活したようでした。もちろん、それは単に番組枠が復活したというだけで、番組自体はMCにしても音楽にしても、それなりの配慮がなされたものだったのでしょう。
この地で達郎の番組が聴けるようになったのは、さらにその次の週のことでした。しかし、オープニングはいつもとは違っていて、まず達郎の「先週放送したものを、もう一度放送します」というコメントで始まったのです。「DATE FM(仙台のFM局)を聴いている人たちに最も聴いてもらいたかったから」ということだったのですね。確かに、その放送は、自身の身内も仙台出身者である達郎の、被災地へ向けての真摯な気持ちの込められた素晴らしいものでした。
6年ぶりとなる達郎のオリジナル・アルバムは、この頃にはすでにかなりの部分での制作が完了していたはずです。しかし、この震災を受けて、タイトルも含めて大幅な手直しが行われたそうです。まずオープニング、ア・カペラでタイトルの「Ray of Hope」というフレーズが繰り返された後、今回新たに作られた「Never Grow Old」が歌われます。アグレッシブなビートに乗ったその曲は、なにか達郎の思いをストレートに伝えるような迫力を持っていました。最後近くで「形のあるものは/いつかは失われる/だけど僕らは/We will never grow old」という歌詞が聴こえてきた時には、不覚にも涙があふれてきました。ちょっと無防備だった心に波を立てるのに、この音楽と歌詞は充分なものだったのでしょう。
いま、世の中には「復興ソング」なるものがあふれています。それらは、いかにも被災者を鼓舞してやまない直接的なメッセージをふんだんに盛り込んだものです。中には、「上を向いて」という歌詞だけを頼りに、半世紀も前に作られた本来は軟弱な失恋の歌を、無理やり「応援ソング」にでっち上げたものまでありますしね。それらを歌う人たちは、なんと力強い使命感に満ちていることでしょう。
しかし、達郎が作ったこの曲は、そんなミエミエの歌詞などないにもかかわらず、本物の「勇気」を与えてくれるものでした。これはもしかしたら、「音楽」の持つある種の「力」を、見事に作品として昇華させたものなのではないでしょうか。
テレビのワイドショーのために作られた「My Morning Prayer」なども、震災を契機に全く別のものに姿を変えた作品だそうです。達郎お得意のスペクター・サウンドに包まれたキャッチーな響きからも、彼のメッセージは痛いほど伝わってきます。
これらは、パッケージとしての「アルバム」という形で聴くときに、より、作者の思いが受け取れるはずです。細切れの「配信」に慣れてしまった聴き手に、このインパクトが重く伝わることを願いたいものです。これはまさに「背信」とは無縁の、真に信じるに足るものなのですから。

CD Artwork © Warner Music Japan Inc.
[PR]
by jurassic_oyaji | 2011-08-11 20:34 | ポップス | Comments(2)
Commented by エフェクター at 2011-08-12 11:35 x
ソッチーです。
大変御無沙汰しております!
私は小田和正派で達郎のALBUMはアカペラのオンストシリーズしか持ってませんが、このALBUMのジャケットは面白いですね。根っからのギター小僧ですね。エフェクターの定番が何台も。その中にコンプレッサーが見当たらないところがカッティング職人の達郎のこだわりなんでしょうか。
スタジオではまず電源の状態を確認するというこだわりなど、この人の裏話にはいつも唸らされます。

札幌も暑いです。
Commented by jurassic_oyaji at 2011-08-12 15:23
ソッチーさん、お久しぶりです。
パリンカ内は「下痢」の話で盛り上がっていました。
2群のバリトンは、私には音が低すぎて、悲惨です。助けて下さい!

コンサートでも、達郎はカッティングに徹していましたが、このアルバムでは「俺の空」という曲で、チョッパー・ベースに乗ってギンギンのソロを披露していますよ。