おやぢの部屋2
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WAGNER/Der Fliegende Holländer
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Albert Dohmen(Der Holländer), Ricarda Merbeth(Senta)
Robert Dean Smith(Erik), Matti Salminen(Daland)
Rundfunkchor Berlin(by Eberhard Friedrich)
Marek Janowski/
Rundfunk-Sinfonieorchester Berlin
PENTATONE/PTC 5186 400(hybrid SACD)




ワーグナーの「指環」全曲を世界で最初にステレオでスタジオ録音したのは、1950年代の終わりから1960年代にかけての、ご存じジョン・カルショーのひきいるDECCAのチームでした(指揮はショルティ)。1980年代に入ると、レコードは「デジタル録音」で作られるのが普通になってきます。そこで最初にデジタル録音の「指環」全曲を作ったのが、ヤノフスキでした。これは、東ドイツ、西ドイツ、そして日本のレーベルが共同制作したものでしたね。
そんなワーグナー録音の歴史の中でエポック・メイキングな仕事を残しているヤノフスキが、今回は、なんと2013年のワーグナー生誕200年を見据えて、今年から3年計画でワーグナーの「オランダ人」以降の全10作品を、PENTATONEからハイレゾ録音によるSACDでリリースするというプロジェクトを開始しました。もちろん、それは世界最初のSACDによるワーグナー・ツィクルスとなるはずです。またもや、ヤノフスキは「歴史」を作ることになります。
その最初を飾るのが、この「オランダ人」です。今の世の中、スペックはSACDになったとしても、もはやスタジオ録音は望めませんから、コンサート形式による全曲演奏のライブ録音なのは、仕方のないことでしょう。そんな贅沢は言いませんから、きちんと計画通りにリリースが運ぶように、各方面には頑張ってほしいところです。なにしろ、最後となる「神々の黄昏」は、2013年の11月にリリースするのだ、と言いきっていますからね。それで、その前の9曲のSACDに同梱されているヴァウチャー券を全部集めると、その「黄昏」が半額で買えるのだそうです。ちょっとせこいですね。日本のユニバーサルでさえ、SACDを4枚買えば、1枚タダでもらえたというのに。
このコンサートが行われたのは、ベルリンのフィルハーモニーです。この、非常に音場のくっきりしているSACDでは、ソリストや合唱はステージの後で、左右に別れて歌っているように聴こえます。ですから、まずオーケストラの楽器が非常に明晰に聴こえてきます。そして、ヤノフスキは、あたかも主役はオーケストラだ、と言わんばかりに、序曲からとてつもなく早いテンポでイケイケの音楽を作ってきます。その勢いは、最後まで止まることなく続き、もうあっという間に全曲が終わってしまうという感じです。トータルの演奏時間は2時間6分ですって。別にカットも行っていないようなので、これはものすごい速さであることが分かります。
特に盛り上がるのは、第3幕(幕間は開けずに、続けて演奏される形、もちろん、慣用版です)に入ってから、ノルウェーの水夫たちの合唱からゼンタの救済まで、もう息つく暇もありません。それを支えるのが、2000年からノルベルト・バラッチュの後任としてバイロイトの合唱指揮を任されているエーベルハルト・フリードリッヒに率いられたベルリン放送合唱団です。言葉がとても明瞭な上に、1音たりとも手を抜いていない完璧な歌唱、こんなすごい合唱はまずオペラハウスで聴くことはできません。オランダ船の水夫たちの合唱が出てくるところの表情などは、まさにショッキング。これを聴くだけで、買いたくなることでしょう(それは「ショッピング」)。
それに比べると、メインのキャストは、高音系はなんかピリッとしたところがありません。ゼンタのメルベスは、ヤンソンスのマーラーの2番の時にもあまり心地よい音程ではなかったのですが、ここではさらにひどい音程になっています。エリックのスミスも、ドイツ語のディクションの悪さもあって、声に酔うというまでにはいきません。そこへ行くと、オランダ人のドーメンは、真にコントロールの行き届いた、細やかな表情を聴かせてくれていたのではないでしょうか。ダーラントのサルミネンも、まさに至芸です。
この先、はたして何枚のヴァウチャー券が手に入ることでしょう、次回の「パルジファル」は、このテンションでやられるのはちょっときついので、パスしたっていいかも。

SACD Artwork © PentaTone Music b.v.
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by jurassic_oyaji | 2011-08-21 22:55 | オペラ | Comments(0)