おやぢの部屋2
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Luka Sulic, Stjepan Hauser(Vc)
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いつものようにラジオを付けっぱなしにしてドライブしていたら、なんだかチェロのアンサンブルによって演奏されているような、マイケル・ジャクソンの「Smooth Criminal」が聞こえてきました。もうすぐ秋ですね(それは「栗実る」)。それこそ「ベルリン・フィルの12人のチェリスト」あたりの最近の録音なのかもしれませんね。それにしても、この演奏、リズム感もいいし何よりもアレンジのセンスが今までの彼らのものとはずいぶん違っています。昔はウェルナー・ミュラーなどが、なんともかったるい「イエスタデイ」のアレンジを提供していましたが、こんな斬新なアイディアを持つアレンジャーを見つけたのでしょうか。
家へ帰って調べてみたら、これはそんなおじさんたちの演奏ではありませんでした。もっと若いチェリストたち、しかも、たった二人のユニットだというのですよ。これは意外でした。多重録音であの厚いサウンドを作っていたのですね。
それは、ルカ・スリックとステファン・ハウザーという、ともにクロアチアで生まれたまだ20代のチェリストたちでした。それぞれロンドンやマンチェスターの音楽大学を卒業したばかり、ステファンなどは、ロストロポーヴィチの最後の弟子というのですから、すごいものです。すでに数々のコンクールでの優勝歴があり、ロンドンのウィグモア・ホールや、アムステルダムのコンセルトヘボウなどで演奏したこともあるという、ものすごいキャリアの持ち主たちです。
そんな彼らが、自分たちで編曲した「Smooth Criminal」をザグレブのスタジオで録音、そのPVYouTubeにアップしたところ、とてつもないアクセスがあって、まさに「一夜にして」世界中の人が知るところとなってしまったというのです。まさに「シンデレラ・ストーリー」ですね。そこで、同じようなコンセプトで「ロックの名曲」を彼らが編曲、演奏したものを集めた、こんなアルバムがリリースされてしまいました。2500円もする国内盤は9月末に発売予定だそうですが、アマゾンでは輸入盤を税込み991円で売ってましたよ。HMVあたりは1000円を超えていますから、これはお買い得。
きちんと聴いてみると、「Smooth Criminal」などでは頭に風の音のようなSEが入っていますが、これはチェロのハーモニクスなのですね。ところどころにパーカッションのようなものも聞こえますが、それらも全てチェロ、アルバム全体を通して、チェロ以外の音は全く使っていないようです。ほんと、いくらふんだんにエフェクターがかかっているとは言え、まるでヘビメタのギターのような音が出てくるのには、驚いてしまいます。しかし、なんと言ってもすごいのは、まさにロックのグルーヴそのものを産み出している強烈なビートです。PVを見れば分かりますが、彼らがリズムを刻んでいる時には、まるでドラマーのような形相で、力強くチェロを「叩いて」いますよ。
そんなギンギンのサウンドの中から、ヴォーカルのメロディラインが聞こえてきた時には、誰しもが幸せな気持ちになれるはずです。それは、例えば「Welcome to the Jungle」などでは、アクセル・ローズのシャウトまでも忠実に再現したものなのですが、そこからは、純粋にメロディの美しさを感じることが出来るのですよ。思わず「ロックって、こんなにメロディアスだったの」と叫んでしまいます。スティングの「Fragile」はもとより、コールドプレイの「Viva la Vida」やニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit」でさえ、なんと美しいことでしょう。
これは、この二人のチェリストが小さい頃から親しんでいたロックに心から共感して、その思いを自らの楽器に託したものに違いありません。彼らの中では、最初からロックとクラシックとの間には、なんの隔たりもなかったのでしょう。そんな才能を羨ましがって眺めているのが、中途半端な「ライトクラシック」しか作り得ない貧しい音楽土壌に育つ、この国の音楽関係者です。

CD Artwork © Sony Music Entertainment
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by jurassic_oyaji | 2011-08-25 20:03 | ポップス | Comments(0)