おやぢの部屋2
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Past Future
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Magnus Rosén(Bass)
Hvila Quartet
David Björkman/
Göteborgs Symfoniker
NAXOS/8.572650




このジャケ写だけ見ると、まるで映画「スクール・オブ・ロック」に出てきたジャック・ブラックみたいですが、実際はもっとおっさんっぽい顔をしているのが、2007年までスウェーデンのヘビメタ・バンド「ハンマーフォール」のメンバーだったベーシスト、マグヌス・ローゼンです。当然、ここで抱えているのはブラックの楽器のギターではなく、エレキ・ベースです。
ジャケットには、「エレキ・ベースがシンフォニー・オーケストラと初めてソロ楽器として共演したレコード」とありますよ。確かに、今までロックバンドがオーケストラと共演したことはありましたが、エレキ・ベースだけ、というのはこれが初めてかもしれません。もっとも、ソロではなく、オケの中の楽器としてだったら、ペンデレツキの作品などではお馴染みのことです。
とは言っても、そんな、さも全曲オーケストラと共演しているような煽り方をしている割には、実際にそういう形は全12曲のうちのたった4曲だけしかないじゃないか、と、だまされたような気分になっても、それはいつもながらのこのレーベルの虚言癖とあきらめましょう。
しかし、その4曲の中でヤン・アルムという人が曲を書いてオーケストレーションまでやっている2曲は、こういうクラシック+ロックみたいなイベントでは必ずお目にかかれるような陳腐な音楽だったのには、「やっぱり」と思ってしまいます。いかにもベースの見せ場を設けているようでも、曲自体がとても散漫でつまらないのですね。同じアレンジャーでもローゼン自身が曲を書いている他の2曲は、それぞれきちんとブルース・コードに乗ったロック・ン・ロールだったり(「Blues man」)、オーケストラとのアンサンブルの必然性が感じられるメロディアスな曲だったり(「Gate to Heaven」)しているというのに。「Gate~」では、サステインをかけながらボリューム操作で頭のアタックを消すというギターではお馴染みの技法で、ベースからまるでオルガンのような響きを出して「歌って」いますしね。
ですから、はじめは「手抜きじゃないか」と思えた、このオケのメンバーによる弦楽四重奏との共演による残りの7曲の方が、さまざまにこの楽器の可能性が感じられて聴き応えがありました。「Sonata G minor」などは、バロック風の曲調に乗せて、なにか物語が綴られているような気さえします。ここではストリングスは清純さの象徴(全員女子です)、ベースはそれに対して邪悪の象徴なんです。ベースは最初のパートでは弦に合わせて殊勝に低音を入れようとしていますが、なにしろそんなんですから(どんなん?)合うわけがありません。とうとういやになって、1人で暴れ始めます。しかし、思い切り「毒」を放出したあとにまた最初のパートが帰ってくると、どうでしょう、そこではベースは見事にアンサンブルが出来るようになっているではありませんか。なんてね。
Badinerie」というのは、「J.S.バッハ作曲」とあったので、まさかとは思ったのですが、やはりあの「組曲第2番」の中のエンディングで聴ける、とっても技巧的な曲でした。キーは同じですから、弦はそのままの楽譜を弾いているのでしょう。そこに、オリジナルのフルートの4オクターブ下の音域で、ベースが「ほぼ」楽譜通りに演奏するというのですから、すごいものです。
足し算が合わないのでは、とお思いでしょう。最後の「Romance between East and West」というローゼンの曲は、ベースの全くの「ソロ」なのですよ。ここでは、さっきの「オルガン風」の音もまじえつつ、とても安らぎを感じられる音楽が流れていきます。タイトルにあるように、「東洋風」なスケールをモチーフとした「ミニマルなヒーリング」でしょうか。エレキ・ベース1本でも、こんなことが出来たのですね。「コミカルなフィーリング」だと、やっぱりジャック・ブラックになってしまいますが。

CD Artwork © Naxos Rights International Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2011-08-29 19:56 | ポップス | Comments(0)