おやぢの部屋2
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LEIGHTON/Organ Works
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Greg Morris(Org)
NAXOS/8.572601




新譜CDをあさっていたら、帯に「メシアンのような官能性はないけれど、もっともっと硬質で、高揚感に満ちたオルガン作品集」と書いてあるものを見つけました。メシアンも、オルガンも好きなリスナーがこれを読んだら、いったいどのように思うことでしょう。というか、これではメシアンのオルガン作品は「官能性があって、硬質ではなく、高揚感に満ちていない」ということになりますが、そうでしょうかね。少なくとも、「高揚感」にかけては、メシアンのオルガン曲を超えるものなど、殆どないのでは、と思っているのですが。となると、このケネス・レイトンという人の作ったオルガン曲はとてつもないものなのでしょう。これはぜひ実物を聴いてみなければ。と、つい、相変わらず間抜けな帯原稿のコピーにだまされてしまうことになるのです。
このイギリスの作曲家に関する知識は全く乏しいものでした。1929年に生まれ、1988年には亡くなっていますから、当然メシアンの作品にも接していた世代なのでしょう。かつては「セリエル」などにも手を染めたそうですが、このアルバムを聴く限りでは、もはやそのような技法には見切りをつけたように感じられます。
演奏している楽器は、イングランド北西部の都市ブラックバーンにあるブラックバーン大聖堂のオルガンです。1969年に作られたものですが、2002年に大幅に改修されています。
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写真を見ると、なんとも「現代的」な外観に驚かされます。普通はファサードで覆われて見えなくなっているパイプを、惜しげもなく晒しだした、まるでモダン・アートのようなデザインですね。実は、これはオルガン本体のほんの一部、これとほぼ左右対称の姿をしたもう一つのオルガンが、祭壇をはさんで反対側に設置されています。そして、その2つのオルガンを同時に操作できる可動式のコンソールが、別に用意されています。ですから、当然アクションはメカニカルではなく、電気によってソレノイド(それ、何だ?)を制御するものになっています。
そんなユニークな楽器、同じ鍵盤でも、ストップによって右と左のオルガンにパイプが振り分けられているのでしょう、一つのパートでも、その音の成分がそれぞれ右と左から出てきて、それがこの教会の豊かな響きの中で巧みに混ざり合って、えもいわれぬ壮大な音場が形成されているのが体験できます。これはかなりスリリングですよ。
そんな音響で、最後に入っている「ダブリン祝祭ミサ」という、12世紀頃の聖歌をモチーフにした作品を聴いてみると、この作曲家の目指したものが見事に「音」として鳴り響いていることが感じられることでしょう。神秘的な始まり方をしたミサは、聖歌の変奏や、対位法的な処理と言った、あくまで「知的」な姿勢を保ったまま、次第に盛り上がっていきます。その「高揚感」は、明らかにメシアンあたりとは異質な、醒めた肌触りをもったものです。おそらく彼の最大の魅力は、その様な盛り上がりとは対極にある、まるで深い闇の中でうごめいているような静謐感なのではないでしょうか。それを助けるのが、このオルガンで多用されている「スウェル」という鍵盤です。写真ではいくつもの扉に囲まれた部分になりますが、そこから聴こえてくる、鳴っているのがかろうじて感知出来るほどのささやかなパイプの音は、まるで深い祈りのような説得力にあふれたものでした。それは、トラック11、「Agnus Dei」の後半、おそらく「Dona nobis pacem」に相当する部分で、はっきり感じ取ることが出来ます。
「帯」に誘われて、「高揚感」を期待したものの、実際に味わえたのは「静謐感」の方でした。ま、こんなだまされ方だったら、そんなに悪いものではありません。いや、もしかしたらそれが奴の魂胆だったのかも。

CD Artwork © Naxos Rights International Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2011-09-04 21:02 | オルガン | Comments(0)