おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
Works for Pedal Piano
c0039487_22571189.jpg





Olivier Latry(Pedal Piano)
NAÏVE/V 5278




「ペダル・ピアノ」という楽器をご存じでしょうか。1位になった時にもらえるピアノじゃないですよ(それは「メダル・ピアノ」)。その名の通り、「足鍵盤(ペダル)」がついたピアノのことです。オルガンと同じように、右手と左手、そして足によってそれぞれ鍵盤を操作して音楽を奏でるという楽器ですね。バッハの時代あたりでも「ペダル・チェンバロ」とか「ペダル・クラヴィコード」という、やはりペダルを付け足した鍵盤楽器はあったそうです。さらに、モーツァルトの時代でも、ピアノのアクションを用いた同じような「ペダル付き」は存在していたそうなのです。ただ、これらの楽器は、あくまでオルガンの練習用としての用途がメインだったようですね。確かに、教会にしかない大きなオルガンはそうそう練習に使うわけにはいきませんから、その様な「代用品」は必要だったのでしょう。
しかし、19世紀の中頃に、この楽器を特定して作曲を行った作曲家が現れます。同時に、ピアノ制作者も、きちんとした楽器を製造するようになりました。しかし、そんな「ブーム」は長続きすることはなく、いつしかこの楽器は忘れ去られて博物館の棚の中に眠ってしまうことになります。そんなペダル・ピアノの一つ、1853年にエラールによって作られ、作曲家のアルカンが愛用したシリアル・ナンバーが24598という楽器が2009年に修復されて、この録音に使われました。
c0039487_22583929.jpg

ご覧のように、ペダル専用の弦が入ったユニットが取りつけられた楽器ですが、オルガンのペダルのように手鍵盤の1オクターブ下の音が出せるわけではなく、最低音は普通のピアノの最低音と同じです。そこから2オクターブ半の音域をカバーしています。
この楽器のための曲を、積極的に作ろうとした最初の人が、アレクサンドル・ピエール・フランソワ・ボエリという、フランスの作曲家です。全く聞いたことのない作曲家ですが、ここで演奏されている5曲の中では、「ファンタジーとフーガ」が、まさにこの楽器ならではの対位法の扱いで、新鮮な驚きを与えてくれます。ただ、その他の曲は、曲そのものが凡庸で、特に魅力は感じられません。
ブラームスの若いころの作品、ト短調の「プレリュードとフーガ」は、この作曲家のバッハへの思いがまざまざと感じられる、とてもロマン派とは思えないような曲です。というか、もはや殆どバッハのパクリにしか聴こえません。フーガの最後もピカルディ終止になってますし。ただ、そのフーガのテーマが、途中で「2音3連」になっているあたりが、いかにもブラームスらしい個性の表れでしょうか。
シューマンの「4つのスケッチ」という曲も、ペダル・ピアノのためのオリジナルの作品です。特にペダルを強調したという使い方ではなく、同時に広い音域を使うという、いわば「連弾」を一人でやっているようなメリットが感じられます。
この楽器の持ち主だったアルカンの曲は、もっとペダルの効果を派手に見せつけるものでした。カプラーのようなものが付いているのか、手鍵盤の左手の音域とのユニゾンが、とてつもない迫力で、まさにこの楽器のアイデンティティを主張しているものでした。
リストの2つの作品は、それぞれ対照的なアプローチで、この楽器の魅力を引き出しています。「システィナ礼拝堂の祈り」というしっとりとした曲では、この場所にゆかりのアレグリの「ミセレレ」がサンプリングされているそうなのですが、それは言われなければ分からないほどの使い方でした。もう1曲の引用、この場所でその曲を「聴音」してしまったというモーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」は、恥かしいほどそのまんまですが。そして、オルガン曲としてはさんざん聴いたことのある「B-A-C-Hによるプレリュードとフーガ」は、ピアノならではの激しいアタックで、決してオルガンでは表現できないような世界を見せてくれています。きっと、リストがラトリーに憑依して、この曲の本来の魅力を伝えてくれたのでしょう。

CD Artwork c Naïve
[PR]
by jurassic_oyaji | 2011-09-18 22:58 | ピアノ | Comments(0)