おやぢの部屋2
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Sing Freedom
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Craig Hella Johnson/
Conspirare
HARMONIA MUNDI/HMU 807525(hybrid SACD)




アメリカのプロの合唱団「コンスピラーレ」の最新アルバムです。サブタイトルには「African American Spirituals」とありますが、これは、かつては「Negro Spirituals」と呼ばれていたカテゴリーのことです。「ニグロ」というのは、もはや使ってはいけない言葉なのでしょうね。サンマもダメですか?(それは「メグロ」)。ということは、日本語の「黒人霊歌」という訳語も、今では「アフリカ系アメリカ人霊歌」みたいに変わってしまっているのでしょうか。しかし、この「黒人霊歌」という言葉は日本人の中にはしっかり定着していて、この字面を見ただけでその音楽が表現している「アフリカ系アメリカ人」の祖先たちの悲惨な思いをイメージできてしまうほどのものになっているはずです。言葉とは、そういうものです。嬉しいことに、「アフリカ系アメリカ人霊歌」でネット検索してみても、この言葉自体は全く引っかかりませんでしたから、まだこんな変な日本語は広まってはいないようですね。まずは一安心、この美しい言葉が、むりやり「ロマ音楽」に変えられてしまった「ジプシー音楽」の二の舞にならないことを祈るのみです。
2、3のオリジナル曲も入っていますが、ここに集められたものは、そんな「黒人霊歌」の定番とも言える懐かしいものが多くなっています。しかも、ウィリアム・ドーソンやロバート・ショーのような、まさに「古典」と言っても構わない編曲がそのまま歌われているのには、さらに懐かしさも募ります。もちろん、それだけではなく、指揮者のクレイグ・ヘラ・ジョンソンや、最近の作曲家による編曲もあって、これが単なる回顧趣味には終わっていないことも明らかです。
さらに、「昔」の編曲でも、大胆な解釈で全く違う顔を見せているのですから、驚かされます。それは、ドーソンが編曲した「Soon Ah Will Be Done」。Aメロである「もうすぐ、世の中の辛いことは終わる」という歌詞の部分は、たとえば古のロジェ・ワーグナー合唱団の「模範的」な演奏では(ちなみに、1992年にリイシューされた国内盤では、タイトルは堂々と「黒人霊歌集」となっていました)、極めて緊張感のあるリズミカルな歌い方(ドーソンの編曲に手を入れて、さらにリズムを強調しています)で、あたかも「勇気」が与えられるかのようなメッセージを伝えていたものでした。ところが、このアルバムでのコンスピラーレときたら、同じ部分がなんとも悲しげで弱々しい歌い方になっています。それは、あたかも「辛いことが終わるなんて、未来永劫あり得ない」というやりきれなさのように聴こえてきます。ですから、Bメロの「私のイエスに会いたい!」という叫びは、とてつもない現実感(捨て鉢とも言う)を持つことになります。
そんな、ある意味「醒めた」表現は、例えばデイヴィッド・ラングが編曲した、まるで点描画のような「Oh Graveyard」や、タリク・オレガンが編曲したクラスターずくめの「Swing Low, Sweet Chariot」のような、いかにもミニマル風の仕上がりを持った作品で威力を発揮することになります。
ところが、そんな、ちょっと「ひねった」扱いは、どうも彼らの本来の姿ではなかったようですね。大半の曲では、昔ながらの朗々と思いの丈を歌い上げるといった「正統的」な演奏に終始しているのは、予想されたこととは言えあまりにもベタで、好きになれません。まあ、それが彼らの「地」なのだ、と言われればそれまでなのですが。
そんな、過剰な思い入れをさらに鬱陶しいものにしているのが、ここでの録音です。確か、前のアルバムでもSACDにもかかわらず、その雑な録音にはちょっと嫌悪感を持ったものですが、今回は別のエンジニアなのに全く同じ傾向の録音になっています。プロデューサーは同じなので、おそらく彼の趣味が反映しているのでしょうね。

SACD Artwork © Harmonia Mundi USA
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by jurassic_oyaji | 2011-09-24 21:22 | 合唱 | Comments(0)