おやぢの部屋2
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MESSIAEN/Fète des Belles Eaux
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Ensemble d'Ondes de Montréal
Louise Bessette(Pf)
ATMA/ACD2 2621




モーリス・マルトノが作った電子楽器、「オンド・マルトノ」の実物を「見る」ことが出来たのは、おととしの今頃でした。
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その時に、この楽器の恐るべき正体を知ることになったのです。なんと、いくつかあるスピーカーのうちの最も手前のものには、「ドラ」が仕込んであるのですね。電子回路によって作られた音は、最終段階でその「ドラ」と共鳴するという、なんともアナログな過程を経て、独特の音を出していたのです。それは、「電子楽器」とは言っても、あくまで自然の音響との調和を考えていた「アコースティック」な楽器であることを、その時再確認したのでした。
決してピアノやオルガンのように誰にでも知られている楽器ではありませんが、今でも細々と製造は続けられており、専門の演奏家もそれなりに育っています。特に、メシアンの作品には「トゥランガリーラ交響曲」や「アシジの聖フランチェスコ」といった、大々的にこの楽器をフィーチャーした「クラシックス」がありますので、これらの曲を将来も演奏するためだけでも、その存在は欠かせません。
そのメシアンは、なんとオンド・マルトノを一挙に6台も使うというとてつもない曲を作っていました。なんでも、1937年にパリで開催された万博のときに、会場で噴水と花火を合体させたというイベントが行われたそうで、それのBGMとして、主催者が当時のフランスを代表するミヨーやイベールといった20人の作曲家に新しい曲を委嘱したのだそうですね。その作曲家たちは、それぞれオーケストラや合唱、室内楽など、全く自由な編成で曲を提供したのですが、そこでメシアンが世に問うたのが、こんな珍しい編成だったのです。
「美しき水の祭典」というこの曲、なんせ6台のオンド・マルトノと6人のオンド・マルトノ奏者を揃えなければなりませんから、なかなか演奏の機会はないのでしょうね。録音も、今まではメシアンとは縁の深いジャンヌ・ロリオ(メシアンの義妹)を中心としたアンサンブルのものしかなかったはずです。お弟子さんを集めての演奏なのでしょう、ロリオ以外のメンバーは全て異なる、たぶん3種類の録音が、ADÈS(1967)ERATO(1982)、そしてREM(1996)から出ていました。最後のものだけ、手元にありました。
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(REM 311306)

そして、今回のCDは、この楽器が初めて人前で演奏されてから80年という記念の年である2008年に、カナダの演奏家によって録音されたものです。なんせ、こんな不確定な要素の多い楽器ですから、ロリオ盤とはかなり異なる演奏を楽しめますよ。
曲は、「花火」と「噴水」とに合わせて作られた8つの部分が切れ目なく続きます。「花火」はリズミックで色彩的、「水」は瞑想的というわかりやすさは、この作品の目的を考えれば、当然のことでしょう。しかし、4曲目の「水」になったときには、その音楽があまりに聴き慣れたものであることに、驚かされるはずです。それは、この3年後に作られることになる「時の終わりのための四重奏曲」の第5曲目、「イエズスの永遠性に対する頌歌」というタイトルの、チェロの息の長いフレーズをピアノが支えるという静かな曲と全く同じものなのですね。さらに、6曲目では、同じフレーズに、別の楽器がまるで滝のきらめきのような飾りを付け加えてくれます。ロリオ盤に比べると、メリハリのはっきりした、気持ちのよい演奏です。
カップリングで、ラヴェルの弦楽四重奏曲を4台のオンド・マルトノで演奏したものが入っています。マルトノは、そもそもチェロの音色に似せてこの楽器を作ったと言いますから、こんな自然なトランスクリプションもありません。もしかしたら、ラヴェルの「なよなよ」感には、まさにぴったりの温度を持っているのではないでしょうか。メシアンとはまた違った、この楽器の粋な魅力を、存分に味わうことが出来ます。

CD Artwork © Disques Atma Inc.
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by jurassic_oyaji | 2011-10-02 20:28 | 現代音楽 | Comments(0)