おやぢの部屋2
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Music by Dalit Hadass Warshaw
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Wendy Warner(Vc)
Re'ut ben Ze'ev(Sop)
The Momenta Quartet
Dalit Hadass Warshaw(Pf, Theremin)
ALBANY/TROY1238




ダリット・ハダス・ウォーショウという、棋士のような名前の(それは「王将」)アメリカの作曲家の作品を集めたアルバムです。このジャケットの写真の方が、ウォーショウその人、なかなかチャーミングな女性ですね。ただし、この写真が撮られたのが今から10年以上前のことですから、ブックレットの中にある「現在」の姿を見て、若干失望をおぼえる人も少なくないことでしょう。時の流れは非情です。
1974年に生まれたウォーショウは、3歳の時から母親のもとでピアノを学び始めますが、程なくしてその音楽的な才能が人々を驚かせることになります。彼女が8歳の時に作ったオーケストラのための作品が、なんたらという世界的な「音楽賞」を受賞してしまうのですね。さらに、その3年後に作った次のオーケストラ曲は、ズビン・メータの指揮によってニューヨーク・フィルと、イスラエル・フィルという2つのオーケストラで演奏されたというのですから、まさに「神童」ですね。
その後、彼女は作曲家、そしてピアニストとして修行を積み、その作品は世界中で演奏され、彼女自身も多くの場所でピアノ協奏曲や自作を演奏するようなピアニストとしての地位を築いています。
一方で、彼女は6歳の時から、「テルミン」を、望みうる最高の先生の下で学ぶようになりました。その先生とは、この楽器を作ったレフ・テルミンの恋人であり、世界最高の「テルミニスト」として名を馳せたクララ・ロックモアその人です。ロックモアとは、単なる師弟関係を超えた、生涯の友人として関わりを持つようになったのだそうです。
このアルバムでは、彼女自身が卓越したテルミニストであることを、2曲の自作の中で知らしめています。1曲は2007年に作られた、テルミンと弦楽四重奏というアンサンブルの「Transformation」という作品。もし、テルミンという楽器には、例の「ヒュウウウ」というおどろおどろしい音しか出せないと思っている人がこれを聴いたとしたら、彼女の楽器が他の「フツーの」弦楽器と見事に溶け合っていることに驚かされることでしょう。実際、この楽器の音に充分慣れ親しんでいる人でさえ、最初のうちはアンサンブルの中にテルミンが入っていることすら気づかないかもしれないほど、それは、音色といい、アーティキュレーションといい、そしてビブラートといい、「生の」弦楽器と寸分違わぬものに聴こえるはずです。そして、しばらくするとそんな均質な響きの中から、明らかにテルミンならではの個性的な音がわき起こって来ることにも気づくはずです。そこでソリスティックに歌われるテルミンは、圧倒されるほどの存在感をもっています。ここで使われている楽器は、クララ・ロックモアが愛用していたビンテージのテルミンなのだそうです。
もう一つのテルミンがフィーチャーされた曲は、アルバム中最も新しい2010年の作品「Nizk' orah」です。ここでは、テルミンが2台とピアノ1台という編成になっていますが、元々はテルミン、チェロ、ピアノという編成で、2001年のロックモアのメモリアル・コンサート(彼女は1998年に亡くなっています)で演奏されたものを、この形に書き換えたものです。ここでは、この3台の楽器を全てウォーショウ自身が多重録音で演奏しています。この録音に用いられたテルミンは、1台は先ほどのロックモアの楽器ですが、もう1台は、この楽器を現代に蘇らせたあのロバート・モーグ(「モーグ・シンセサイザー」の発明者)が作った、オールド・テルミンの完全なレプリカ「91W」という楽器です。そんな由緒ある楽器による「ひとりアンサンブル」、ここでは、あたかもロックモア、モーグ、そしてウォーショウという、それぞれにレフ・テルミンとのつながりのある3人の魂が共演しているようには、感じられないでしょうか。

CD Artwork © Albany Records
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by jurassic_oyaji | 2011-10-08 19:59 | 現代音楽 | Comments(0)