おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
Impressions Françaises
c0039487_2104928.jpg


Juriette Hurel(Fl)
Hélène Couvert(Pf), Arnaud Thorette(Va)
Christine Icart(Hp), Florence Darel(Réc)
ZIG-ZAG/ZZT110401




ロッテルダム・フィルの首席フルート奏者、ジュリエット・ユレルのソロ・アルバムです。「フランスの印象」という、粋なタイトルが付けられていますが、ここでは、これまた粋なジャケットと相まって、「揺れる乙女(?)心」みたいなものが表現されているのでしょうか。ラインナップは、プーランク、フォーレ、そしてドビュッシーと、フルートの名曲としてははずせないものが並んでいます。
プーランクは、もちろん「フルート・ソナタ」です。この曲を演奏していないフルーティストはいないのではないか、というほどの「名曲」ですから、録音するのにはかなり高いハードルが要求されるはずですが、ユレルはそんなプレッシャーにも負けないでいとものびのびと演奏しています。彼女の持ち味の繊細さを前面に出して、極力「気持ちのよい」演奏に徹しているのではないでしょうか。それはそれで魅力的ではありますが、やはり聴く方としてはもう少しなにかがあれば、と思ってしまいます。第2楽章などは、もっともっと歌ってくれれば、とか。
フォーレは、おそらくフルートを吹いたことがある人であれば必ず聴いた、あるいは実際に吹いたことがある曲ばかりですから、今度は別の意味でのハードルが待っています。それは、例えば「コンクール用小品」とか「シチリエンヌ」といったそれほど難易度の高くない曲を、単に「おさらい会」レベルでしか聴いたことのない人に対して、きちんとした「芸術」であることを見せつけなければいけない、という、ある意味「使命」です。もちろん、そんなことが出来るのは本物の「芸術家」だけですから、ここではごく当たり前のものしか聴くことは出来ません。
ただ、彼女はここでちょっとした抵抗を試みています。「コンクール用小品」のふつうの楽譜は、同じ部分が2度繰り返されそのあとにちょっとしたコーダが付く、という構成になっています。同じメロディを、2度目にはちょっとニュアンスを変えて味わってもらうという趣向なのですね。ところが、ここではその「2度目」がすっぽりなくなっています。実は、これがフォーレが作ったオリジナルの形、繰り返しは別の人が「コンクール(初見演奏用の課題)」ではあまりに素っ気ないので、「コンサート」用に付け加えたものなのです。ですから、彼女の演奏からは、この曲がいかに「素っ気ない」ものであるかを学ぶことが出来るのですね。
ドビュッシーでも、彼女は誰もやったことのないような試みを行っていました。少なくともLPCDで聴いたのはこれが初めてなのですが、「シランクス」を、それこそオリジナルの形で演奏しているのですよ。今では完全にフルート・ソロの作品として独り立ちしている曲ですが、本来はさるお芝居の「劇伴」として作られたものなのですね。そこで、ここではそのガブリエル・ムーレの「プシシェ」という劇の第3幕第1場で語られる台詞と一緒に演奏しているのです。これはなかなかのインパクトです。というより、あまりに台詞の存在感が大きいため、フルートは完全にBGMとしてしか聴こえてきません(それは、「劇伴」の理想的な形なのでしょうが)。ですから、最後にもう1度、フルートだけで演奏される時には、無性に台詞が欲しくなってしまいます。
ドビュッシーでもう一つ、フルートのレパートリーとして欠かせないのが、「フルート、ヴィオラ、ハープのためのソナタ」です。ここでも、彼女によってこの曲の新しい面を知ることが出来ました。今まで、この曲ではフルートが主役だとずっと思っていたのですが、実は本当の主役はヴィオラだったんですね。ここで演奏しているアルノー・トレットという人のヴィオラがあまりに素晴らしいので、そう思ってしまったのでしょう。逆に言えば、いかにユレルの存在が薄いか、ということでしょう。「乙女心」が、これほどまでにはかないものだったとは。

CD Artwork © Zig-Zag Territoires
[PR]
by jurassic_oyaji | 2011-10-12 21:02 | フルート | Comments(0)