おやぢの部屋2
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BEETHOVEN/Symphonies
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Katerina Beranova(Sop), Lilli Paasikivi(MS)
Robert Dean Smith(Ten), Hanno Müller-Brachmann(Bar)
Riccardo Chailly/
GewandhausChor, GewandhausKinderchor,
MDR Rundfunkchor, Gewandhausorchester
DECCA/478 2721




ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のベートーヴェンといえば、26年間もカペルマイスターの地位にあったマズアの指揮による1970年代と1990年代の2度の交響曲全集が、まずは思い出されます。特に90年代のツィクルスは、ペーター・ギュルケとペーター・ハウシルトによって作られたクリティカル・エディションを用いた「最初」で、おそらく「最後」の全集録音として、マニアの間では評判を呼んでいるものです。この「新ペータース版」は、有名な「ベーレンライター版」に先駆けて1970年代に、世界で最初に刊行されたベートーヴェンの交響曲のクリティカル・エディションで、発表された当時は大騒ぎになったものですが、今ではどうなっているのでしょう(ペータースのカタログにはまだあるようですね。ちなみに、ハウシルトは、後にブライトコプフ版に携わることになります)。そもそも、この楽譜の出版は、当時まだ東西に分かれていた「東ドイツ」の、いわば国威発揚の意味が込められたプロジェクトだったわけで、そのためには「東ドイツ」の象徴とも言えるマズアとこのオーケストラとのコンビによる演奏はいわば「必然」だったのですね。
この新ペータース版は、例えば「5番」の第3楽章のトリオを最後にもう1度繰り返すといったようなユニークな主張が込められたもので、マズアのあとを引き継いだブロムシュテットの時代にも、おそらくこの楽譜を使って演奏していたはずです。
ですから、今回そのブロムシュテットの後任者であるシャイーがこのオーケストラを使って全集を録音したということになると、そこではどんな楽譜が用いられているかが、最も興味がわくところなのではないでしょうか。
交響曲全集の現物は5枚組、交響曲の他に序曲も全部で8曲入っています。その装丁が、こんな感じ。
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CDが収納されるスリーブが、ブックレットと一緒に綴じられていて、まさに「アルバム」ですね。
そのブックレットには、「私は、新しい原典版も勉強してみたが、それは使わなかった」というシャイーの言葉が紹介されています。つまり、ある意味「ゲヴァントハウスの伝統」のようになっている新ペータース版は、彼はもう使わないと宣言していたのです。彼が目指したのは、マズア以前にすでに培われていたまさに歴史的な「伝統」だったのでしょう。基本的には「古いペータース版」を使うというのですね。さらに、彼は「イーゴル・マルケヴィッチ版」と、「ジョージ・セルのスコアへの書き込み」を、注意深く研究したそうなのです。これは、ベーレンライター版や新ブライトコプフ版がスタンダードになりかけている現代のベートーヴェン業界ではかなり異例なアプローチとなるのではないでしょうか。
その結果産み出されたものは、あくまでモダン・オーケストラの力が最大限に発揮された、躍動感にあふれたベートーヴェンでした。これはこれで、今の時代ではなんとも新鮮な体験が味わえる得難いものです。例えば、「5番」のフィナーレなどは、ピッコロを1オクターブ高く演奏させて、とても華やかな効果を上げています。なんせ、楽譜には書かれていない新しいフレーズまで吹かせているのですからね。「原典版」を使っていたら、絶対こんなことは出来ません。
しかし、原典版には、明らかに印刷ミスだったものをきちんと訂正した、という大切な意味もあるはずです。「1番」の第3楽章「4番」の第1楽章などを「間違った」まま演奏しているのには、指揮者としての最低限の使命を放棄しているのではないか、という思いもついて回ります。せっかく「6番」の第2楽章のヴァイオリンに弱音器を付けたり、「9番」のコントラ・ファゴットを1オクターブ低く演奏するというように、一部では「原典版」の成果が反映されているというのに。
これは、彼が影響を受けたというトスカニーニのような颯爽とした演奏で聴衆を感動させるのとは、全く別の次元の問題です。

CD Artwork © Decca Music Group Limited
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by jurassic_oyaji | 2011-10-30 20:03 | オーケストラ | Comments(1)
Commented by gkrsnama at 2013-06-06 23:23 x
シャイーは常々出さないと言っていたのに、ついに出したんですね。古い革袋というか、何か特別のものが実現できているでしょうか?