おやぢの部屋2
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RZEWSKI/The People United Will Never Be Defeated
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Ursula Oppens(Pf)
PIANO CLASSICS/PCL0019




高橋悠治の録音をリアルタイムで聴いて以来、ジェフスキの「不屈の民」の録音はほぼ全て手中のものにしてきました(いや、中には他人のコレクションを譲り受けたのもありますが)。ただ唯一、この曲を委嘱し、初演を行ったアーシュラ・オッペンスのものだけは、入手できませんでした。それは初演直後にVANGUARDに録音されたとされるものなのですが、そのレーベルは人手に渡ってしまい、絶版状態になっていたのですよ。
それが、こんな、ピアノ曲のライセンス・レーベルからいきなりリリースされてしまいました。いともあっけなく積年の夢がかなってしまって、呆然としているところです。
実物を手にしてみると、録音されたのは1978年、初演から3年も経っていた頃だったのですね。というか、高橋悠治が録音したのが同じ年の初めですから、録音に関しては悠治の方が早かったのかもしれませんね。ただ、このオッペンスの録音には、悠治や他の演奏者とははっきり異なっている点があります。それは、今では最後の変奏が終わって、テーマが再現される前に必ず入ることになっている「即興演奏によるカデンツァ」が入っていない、という点です(もう一人、ドゥルーリーも入れてません)。1979年に出版されたこの曲の楽譜(全音!)には、ここに「5分かそのくらいで終わるような即興的なカデンツァ」という指定がありますが、もしかしたら初演の際にはなかったものを、出版にあたって作曲家が加えたものなのかもしれませんね。この楽譜には悠治の録音の品番(LP)が掲載されているぐらいですので、悠治は当然印刷譜の情報を得ていたことでしょうから(もっとも、第36変奏の最後から6小節目、「very slow」になるところが、楽譜では「ppp」のところを「ff」ぐらいで弾いていますから、なんとも言えませんが)。初演者であったオッペンスは、自筆稿を使って録音した、とか。
まあ、本当かどうかは分かりませんが、そのせいで彼女の演奏は、この作品の演奏時間としては最も短いものとなっています。今ではまず1時間を超えるのが標準的な演奏なのに、「40分台」なのですからね。しかし、それだけではなく演奏そのもののテンポがかなり速いような気がします。そこで、試しに他の演奏と、カデンツァの時間を抜いて比較してみると、やはり彼女の演奏が最も短い(速い)ことが分かります。


  • 演奏家(録音年)    全演奏時間/カデンツァ/カデンツァ抜き時間
  • オッペンス(1978)    49:17-00:00=49:17
  • 高橋悠治(1978)     58:01-01:22=56:39     
  • ジェフスキ(1986)    61:04-07:42=53:22
  • ドゥルーリー(1992)   54:54-00:00=54:54
  • ジェフスキ(1998/2001) 63:47-05:56=57:51
  • アムラン(1998)     57:22-06:24=50:58
  • ファン・ラート2007)  62:30-06:00=56:30
  • シュマッハー2009)   64:50-04:00=60:50


これは、「超絶技巧を駆使して、この難曲を弾き切った」と言われているあのアムランよりもさらに「速い」のですから、ちょっとすごくないですか?別にアスリートではないので、単なるデータを比較することに全く意味はないのですが、正直、初演の段階でこれだけのレベルにあったのを知って、ちょっと驚いているところです。確かに、このオッペンスの演奏には、まさに目の覚めるような鮮やかさで圧倒されてしまいます。これを聴いたうえでアムランを聴き直してみると、そこにはほのかなリリシズムが漂っていることが感じられるはずです。そんな余計なことをしなければ、「チャンピオン」になれたものを。
そう、初演者の演奏を初めて聴いて思ったのは、この曲はあるがままに弾かれてこそ、真のメッセージが伝わってくるのだ、ということです。あたかもセリー・アンテグラルを装ったかに見える第6変奏や第7変奏の中から、あのベタなテーマがくっきり浮き上がって聴こえてきた時に、それはまさに痛烈なパロディ以外の何物でもないことを、この演奏からは容易に汲みとることが出来るのです。
作曲家にとっては、本当は「チリの革命」などはどうでもよかったことだったのかもちりません。

CD Artwork © Piano Classics
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by jurassic_oyaji | 2011-11-07 20:45 | 現代音楽 | Comments(2)
Commented by 本宮喜多郎 at 2013-08-25 16:08 x
興味深いブログ記事見つけました。

私は、オッペンスの生演奏聴いていますが、手書きの楽譜でした。
で、あの華奢な人がよくもまあ、こんなすごい演奏をするもんだ、と圧倒されっぱなしでした。そのときの演奏を話題にしたブログがありますので、添付しますね。
Commented by jurassic_oyaji at 2013-08-25 20:47
本宮様。
貴重な情報、ありがとうございました。