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MILHAUD/MESSIAEN/La Création, la Fin
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Jean-Pierre Armengaud(Pf)
Jan Creutz(Cl)
Paul Klee 4tet
BLUE SERGE/BLS-020




ミヨーの「世界の創造」と、メシアンの「世の終わりのための四重奏曲」を並べて、「創造、そして終わり」という、いかにもジャズのレーベルらしい粋なタイトルを付けたCDです。たった69分で世界の始まりから終わりまでを体験できるのですから、なんとお手軽な。
ダリウス・ミヨーの「世界の創造」は、「天地創造」をジャズで仕立てたバレエ音楽でした。それを、ピアノ五重奏に作り直したものが、ここで聴けるバージョンです。オリジナルはなにやら意味深なタイトルが付いた6つの部分に分かれていましたが、この編成ではいとも即物的に「前奏曲、フーガ、ロマンス、スケルツォ、終曲」という5つの組曲風のタイトルが与えられています。
「ジャズ」を象徴的に表していたサックスなどが使われていないせいでしょうか、「前奏曲」はいともまっとうな、それこそハイドンの作品を思わせるようなシリアスな情感をたたえています。しかし、「フーガ」でブルーノートのテーマが出現しさえすれば、あとはもうまごうことなき「ジャズ」の世界が拡がります。クラシックの作曲家が本気で「ジャズ」を作品のモチーフとして取り入れようとしていた(あ、ショスタコーヴィチの「ジャズ組曲」とは別の次元で、ですが)時代のほほえましい名残なのでしょうが、それがあまりに楽天的な姿をさらけ出しているのは、おそらく、ここで演奏しているメンバーの明るい資質に拠るものなのでしょう。
その様な人たちがメシアンを演奏すると、やはりそこには見事に明るい世界が拡がります。ここで新たに加わったクラリネットが、とてもエーラー管とは思えないような明るい音色で、一層盛り上げます。「鳥たちの深淵」での彼のソロは、音色とともに、とてもおおらかな音楽性に支配されているものでした。録音会場がとても豊かな残響を持っているのを考慮したのか、かなり遅めのテンポ設定で、細かい音符の部分でも極力音が濁らないような「安全運転」に終始していることも、切迫性のかけらもない滑らかな音楽を生む要因だったのでしょう。もっと厳しいものを望む向きには物足りないかもしれませんが、これはこれで新鮮な体験です。
ただ、4つの楽器が常にユニゾンという、とても緊張感を要求されるはずの「7つのらっぱのための狂乱の踊り」までもが、いとも隙だらけのユルさで演奏されていると、ちょっとこれは違うのでは、という思いを抱かざるをえません。まあ、全員が同じ方向を向いて強烈なメッセージを放つとまではいかなくても、せめてアインザッツぐらいは合わせてよ、という思いでしょうか。
この曲では、イタリアのピアノ職人、ルイジ・ボルガートが1人で作っているという、他に類似品が見あたらないピアノ、「ボルガート」が使われています。まさに手作りの味わいで最近評判を呼んでいる楽器です。これを弾いているピアニストは、そのピアノの特性を良く知っているのでしょう、とても繊細なメシアンの和声を、思いっきり柔らかい音で届けてくれています。それをバックにチェロとヴァイオリンが息の長いメロディを歌い上げる2つの「頌歌」では、とても贅沢な響きに癒される思いです。チェロが担当する「イエズスの永遠性に対する頌歌」こそ、ちょっとゴツゴツしたチェロの歌い方で余計な力を感じてしまいますが、ヴァイオリンが歌う「イエズスの不死性に対する頌歌」は文句なしの安らぎ感を堪能できます。まるでアナログ録音のような湿り気を帯びた音が、一層のゴージャス感を与えています。
どこまで行っても厳しさには無縁のメシアンでしたが、あのミヨーの流れだったら、こんなのもありなのでしょう。これほどまでに楽しい「世界」に暮らし、なんの天災も受けずに一生を全う出来る人はしあわせです。

CD Artwork © Blue Serge
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by jurassic_oyaji | 2011-11-15 23:09 | 室内楽 | Comments(0)