おやぢの部屋2
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J.C.BACH/Missa da Reqviem
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Lenneke Ruiten(Sop), Ruth Sandhoff(Alt)
Colin Balzer(Ten), Thomas Bauer(Bas)
Hans-Christoph Rademann/
RIAS Kammerchor
Akademie für Alte Musik Berlin
HARMONIA MUNDI/HMC 902098




大バッハの末子(つまり、P.D.Q.バッハのお兄さん?)ヨハン・クリスティアンのイタリア時代の宗教曲は以前にもご紹介しましたが、それに続いて「レクイエム」の登場です。タイトルの綴りが「Reqviem」などとなっていますが、これは別にミスタッチではありません。そもそも、ラテン語系の言葉には「u」とか「w」といった文字はなかったのですよね。
前回の「晩課詩篇」のライナーでは、作品番号として「Warb」というものが付けられていました。これはアーネスト・ウォーバートンというイギリスの音楽学者によって1985年にまとめられた、ジャンル別の作品番号のことです。「Warb」または「W」のあとに、鍵盤楽器の曲は「A」、室内楽は「B」という風にジャンルを表す記号が付きます。宗教曲は「E」、ですから「WE」のあとに、個別の番号が付くことになります。前回の晩課詩篇は「WE 14」から「WE 22」にあたる作品の中から取り上げられていました。今回の「レクイエム」とカップリングの「ミゼレーレ」は、「WE 11-12」と「WE 10」ということになります。
しかし、今回他のレーベルになってみると、作品番号は「W」ではなく「T」というものに変わっていました。これは困りますね。「WE 10」が「T 207/5」なんてことになっていますよ。これはウォーバートン以前にあった番号で、チャールズ・サンフォード・テリーという人が書いた「John Christian Bach」(1967年第2版)という本のページ数と、そのページの中の項目の番号によって、作品を特定するという、ちょっと変わった番号です。今ではほとんど使われていないようですが、こんなところでお目にかかるとは。出来ればウォーバートンに一本化してもらうよう、六本木あたりで話し合ってもらいたいものです。
作品番号が2つありますが、この「レクイエム」はそれこそ父バッハの「ロ短調ミサ」のように、別の機会に作られた2つの作品をまとめたものです。しかも、それは1757年にミラノで初演された「Dies irae」というタイトルの「Sequenz」(T 202/4=WE 12)と、その翌年の「Introitus & Kyrie」(T208/5=WE 11)だけで、「レクイエム」全体の最初の部分しかありません。結果的に最後の曲が「Lacrimosa」だったなんて、まるでモーツァルトみたいですね。でも、クリスティアンはそこで亡くなったわけではなく、この後はイギリスに渡ってオペラ作曲家としての華々しいキャリアが待っているのですから、未完なのは単に作る必要がなかっただけのことなのでしょう。
この「レクイエム」には、彼がイタリアで学んだイタリア音楽の様式が満載です。「Introitus」は、最初にプレーン・チャントから始まるというのがユニーク、そのあとには、多声部の合唱が、ちょっと昔風のまるでガブリエリのような華やかな音楽を聴かせてくれます。続く「Kyrie」は、軽やかなフーガが魅力的、あくまで明るい音楽なのは、ヘ長調という調性のためなのでしょう。
それが、「Dies irae」になると曲はハ短調に変わり、雰囲気は一変します。そこからは、なんとも表情豊かな、ドラマティックな音楽が展開されることになります。合唱に4人のソリストが加わり、アリアや重唱など、バラエティに富んだまるでオラトリオ、いや、オペラといっても構わないほどの劇的な音楽です。ほとんどのアリアには終わりにカデンツァが付くのも、まさにイタリア・オペラ。「ミゼレーレ」ともども、あまり抹香臭くない、キャッチーな「宗教曲」を堪能できます。
ソリストも合唱も、変に力まない自然体の爽やかさが心地よく感じられます。RIAS室内合唱団は、ほんのり包み込むような暖かい音色で、決して押しつけがましくない音楽を届けてくれています。それに対して、バックの「古楽アカデミー」がかなり鋭角的に、ちょっと突き放したような態度を取っているのも、昨今あちこちで見られる偽善的な「寄り添い」とは一線を画していて、すがすがしく感じられます。

CD Artwork © Harmonia Mundi s.a.
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by jurassic_oyaji | 2011-11-17 19:58 | 合唱 | Comments(0)