おやぢの部屋2
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French Flute Music




Patrick Gallois(Fl)
Lydia Wong(Pf)
NAXOS/8.557328



前作のモーツァルトの協奏曲では、今までになかったような型破りな演奏を披露してくれたガロワですが、今回はオーソドックスな「フランス音楽」のアルバムを録音してくれました。もちろん「オーソドックス」だと思っているのは、一部のフルート演奏家及び愛好家だけなのかもしれませんが。というのも、ここに収録されている曲は、プーランクはともかく、ピエール・サンカンやアンリ・デュティユーのソナチネなどは、フルーティストのレッスンには必ず登場する「名曲」ではあるのですが、一般の音楽愛好家が好んで聴いているといった意味での名曲では決してないのです。「勉強したことがあるから」という流れで、リサイタルなどで取り上げる演奏家も多いことでしょうが、大体そういうところに聴きに行くのは限られた「フルート社会」の人たちだけでしょうから、そのような場で真に音楽的な演奏など、生まれるはずもありません。
もちろん、ここでガロワが披露しているものは、そんな硬直したありきたりの演奏であるわけはありません。ある種「お約束」が支配しているこれらの曲から、彼は見違えるばかりの生き生きとした音楽を引き出してくれているのですから。それは、よく言われる「フランス音楽のエスプリ」などというようなちょっと甘ったるい印象を与える語彙で括られるようなものではなく、「魂のほとばしり」とでも言えるほどのもっと逞しいものなのです。それは、例えばプーランクのソナタの最初のテーマの橋渡しに用いられている上昇スケールを、テンポの中でさらりと聴かせるという「普通の」演奏によく見られる扱いではなく、ことさらその中に意味を見出すことを要求するような、一瞬停滞するかのような表現からも、感じ取ることが出来るはずです。
最後のトラックに収録されているのが、ピエール・ブーレーズの「ソナチネ」であることが、このアルバムの価値をさらに高めることになっています。1946年という、「現代音楽」が最も尖った様相を見せていた時代の産物を、このような「名曲」の中に折り込むというプログラミング自体が、すでに「事件」なのですから。実際、この曲の録音で現在入手可能なものは、ブーレーズの「身内」とも言えるソフィー・シェリエのものぐらい(あいにく、聴いたことはありませんが)、いわゆる「名演奏家」によるものは皆無です(シュルツ盤は廃盤になっています)。ですから、そこに、ガロワの演奏が加わった意義は小さくはないはずです。手元に1969年録音のニコレの演奏によるWERGOのLPがあったので、久しぶりに聴き直してみたのですが、それはこの年月が作品に与えた充分な醸成期間であったことをはっきりと物語るものでした。とても複雑なこの曲のスコア、特にダイナミックスには細かい指定があるのですが、ニコレの場合音符を追うのに精一杯で、とてもそこまでは手が回らないという感じなのに、ガロワはまさに余裕を持ってそれらの指定を忠実に音にしているのです。ちょっと意外かもしれませんが、実はこういう現代曲でのガロワの楽譜に対する忠実さには、定評があります。その自信に満ちたしなやかな演奏からは、「ブーレーズ」を、甲高い声がいやだからと(それは「ネーネーズ」)ちょっと敬遠していた人でもすんなり入り込んでいける、確かな魅力が伝わってきます。始まってちょっとしたあたりの、ピアノのトリルに乗った「Très modéré, presque lent」の部分のフルートの美しいこと。
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by jurassic_oyaji | 2005-05-07 19:43 | フルート | Comments(0)