おやぢの部屋2
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GERSHWIN/Rhapsody in Blue, BERNSTEIN/West Side Story
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Katia & Marielle Labèque
KML/KML 1121




ともに還暦を過ぎてもとびきりの美貌とお色気を保ちながら演奏活動を続けているラベック姉妹を見ていると、やはり同じような年齢で若い頃と変わらないお色気を振りまいているデュオ、「ピンク・レディ」を、つい思い浮かべてしまいます。彼女たちが若さを保っているのは、いったいどんな魔法を使ったからなのでしょう。
ピンク・レディがもっぱら昔のヒット曲を歌っているように、ラベック姉妹もかつて録音していたものを新たに録音し直す、ということで、昔からのファンを喜ばせているように見えます。今回の新録音、あいにく正確な録音データはどこにもないので、いつ演奏されたのかは知る由もありませんが、「ラプソディ・イン・ブルー」にしても「ウェストサイド・ストーリー」にしても、1980年頃に一度録音されていたものです。
「ラプソディ・イン・ブルー」を、1980年の録音と今回のものを比べてみると、その間には大きな「成長」のあとを見いだすことが出来るはずです。旧録音では、若々しい感情にまかせて、それまでのクラシックの演奏家がためらっていたような大胆な表現を軽々と持ち込んだことがはっきり感じられます。例えば、楽譜では八分音符が並んでいるようフレーズを、ことさら「ジャズ」を意識して付点音符で「スウィング」して演奏する、といったようなところです。それは、もちろん全ての部分でその様なことをやっているのではなく、ごく限られたところで、極めて印象的に、場合によってはかなりあざとく「違い」を強調しているものでした。
しかし、新録音では、その様な部分的なサプライズは全くなくなっています。その代わりに、曲全体に渡ってほんのわずかだけ前の音を長目に演奏するという、極めて精密かつアバウトなことを行っているのですよ。その結果、この曲からは、決してこれ見よがしではないほのかな「スウィング感」が漂うようになりました。小手先だけの技巧ではなく、もっと深いところでこの作品の「ジャズ」としての本質を表現するすべを、彼女たちは手に入れたのでしょう。
「ウェストサイド・ストーリー」に関しては、この録音の2台ピアノと打楽器のための編曲を行ったのがアーウィン・コスタルだという点が、興味を引きます。あいにく前回の録音を聴いたことはありませんから、その時と同じものなのかは確かめようがないのですが、コスタルは1994年に亡くなっていますから、今回の録音のための編曲ではあり得ません。おそらく、かなり以前に彼女らのために作られた編曲なのではないでしょうか。
コスタルといえば、シド・ラミンとともに、この名作ミュージカルのオーケストレーターとして知られている人です。いわば、サウンド面でこの作品に寄与していた人物、彼の編曲であれば、この編成でもオリジナルの持つグルーヴがそのまま反映されたものに仕上がっているはず、ただの「仮装」で終わるわけはありません(それは「コスプレ」)。確かに、「プロローグ」などは、口笛の導入から始まる歯切れのよいピアノが、まさにオリジナルそのものでした。次の「ジェット・ソング」では、いきなり4ビートのジャジーな仕上がりで戸惑ってしまいますが、それ以降は期待を裏切らない出来になっています。面白いのは、こういうバージョンで聴いてみると、バーンスタインの音楽は歌詞がなくてもしっかり作品としての完成度が保たれているのが分かる、ということです。これは、先日のBDで、ソンドハイムが「バーンスタインの曲は、あくまでインストとして完結している」と語っていたことと見事に符合します。
ジャケットが、映画版の「ウェストサイド・ストーリー」のエンド・タイトルに呼応したものになっているのも、楽しめます。こちらはスプレー・アートによるグラフィティ風のデザイン、「半世紀後」の「ウェストサイド」です。

CD Artwork © KML Recordings
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by jurassic_oyaji | 2011-12-12 21:12 | ピアノ | Comments(0)