おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
BACH/Johannespassion Fassung IV(1749)
c0039487_2249109.jpg



Konrad Junghänel/
Cantus Cölln
ACCENT/ACC 24251




コンラート・ユングヘーネルという、ちょっと臭いので近くに寄りたくないような名前(それは「ゆるく、屁~出る」)のリュート奏者によって1987年に結成された「カントゥス・ケルン」は、ソリスト級のメンバーが集まったヴォーカル・アンサンブルです。公式サイトでは一応5人のメンバーのクレジットがありますが、レパートリーによって適宜メンバーを増減させるという、フレキシブルな体制を取っているのでしょうね。2003年に録音された「ロ短調」では10人でしたが、今回、2011年の5月に録音された「ヨハネ」では8人と、必要な声部にそれぞれ2人ずつをあてがうという編成になっています。もちろん、合唱の部分だけではなく、アリアやレシタティーヴォも、それらのメンバーによって歌われます。いわゆる「OVPP」という、頑なに1パート1人に限ったものではなく、もう少し暖かな質感が得られる編成です。
オーケストラが加わる時も、特に別の名前を名乗ることはなく、「カントゥス・ケルン」という団体の一部として扱われています。バッハの作品の場合は、弦楽器はきっちりパートで一人という最小限の編成を取っているようです。
今回の「ヨハネ」の録音にあたってユングヘーネルは、この作品の数多くの異稿の中から、1749年に演奏されたとされる「第4稿」を選びました。おそらく、録音としては1998年の鈴木盤と、2007年のビラー盤に次ぐ3番目のものとなるのでしょう。一般に演奏されることの多い新全集は、実際にその楽譜の通りに演奏されたものではなく、後世の人が未完のスコアを元に作り上げたものですから、「オーセンティック」という立場を取ればこのような確実に「ある時期」に音になっていたはずのものを演奏するのは好ましいことです。そこには上演にあたって楽譜に加えられた各方面からの圧力の痕跡まで、一つのドキュメンタリーとして反映されることになるわけですからね。
歌手の顔ぶれを「ロ短調」の時と比べてみると、ここではソプラノのメンバーが全て別の人になっています。そのうちの一人が、お気に入りのアマリリス・ディールティエンスだったのは、幸せなことでした。コラールなどでは彼女の音色に合唱全体が支配されることになった結果、「ロ短調」よりワンランク上の暖かみが生まれることになりました。彼女は9番のアリア「Ich folge dir gleichfalls」でソロを取っていますが、その歌はどこにも隙のない素晴らしいものです。彼女のソロを初めて聴いた2010年のフェルトホーフェン盤での「マタイ」の時より、さらに洗練された味が出ているのですから、嬉しくなってしまいます。
エヴァンゲリストのハンス・イェルク・マンメルは、「カントゥス・ケルン」のコア・メンバーですが、とても伸びやかでソフトな声で、レシタティーヴォをリードしています。もう一人のテノール、ゲオルク・ポプルツも、非常によく似た声で、合唱では見事に溶け合っています。やはりコア・メンバーのバス、ヴォルフ・マティアス・フリードリヒの、暖かいアリアも光ります。
ただ、やはりコア・メンバーであるアルトのエリザベス・ポピエンが、肝心の低音があまりに軽すぎて、アリアでは物足りません。とは言っても、ユングヘーネルのアプローチはそれほどドラマティックなものではありませんから、全体の中ではそれほどのマイナスとは感じられないはずです。
古くはドイツ・ハルモニア・ムンディ、最近はフランスのハルモニア・ムンディ、そして今回初めてアクサンと、レーベルの変遷もある「カントゥス・ケルン」ですが、録音はフランス・ハルモニア・ムンディ時代の「ロ短調」と同じ「トリトヌス」が担当しています。それは教会の残響が絶妙にブレンドされた芳醇な響き、ひたすら滑らかな音楽作りと相まって、極上の時間が過ぎていきます。その中から聴こえてきたものは「ロ短調」同様、アンサンブルの喜びでした。

CD Artwork © Accent
[PR]
by jurassic_oyaji | 2011-12-18 22:50 | 合唱 | Comments(0)