おやぢの部屋2
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HOLST/The Planets(tr. by Peter Sykes)
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Hansjörg Albrecht(Org)
OEHMS/OC 683(hybrid SACD)




アルブレヒトのオルガン・ソロのアルバムも、もうこれが何枚目なのか分からないほど、順調にリリースされてきました。オーケストラのための作品を編曲したものと、バッハの作品とを交互に制作するというやり方で、ファンを飽きさせないような配慮も抜かりはありません。
編曲ものの場合は、常にキールにある聖ニコライ教会のオルガンが使われています。この由緒ある教会の大聖堂には、2つのオルガンが備えられているのが特徴です。祭壇に向かって右側にカヴァイエ・コルによる2つの手鍵盤と、1オクターブちょっとの足鍵盤という小さなクワイア・オルガン、そして、真後ろのバルコニーには3つの手鍵盤と4オクターブの足鍵盤という大オルガンが設置されています。さらに、この2つのオルガンは、電気アクションによって同時に演奏することも出来るようになっています。ブックレットに6段鍵盤のコンソールの前に座っているアルブレヒトの写真がありますが、これがおそらく2つのオルガンを「同時に」演奏するための「装置」なのでしょう。それにしても、このキーボードは壮観ですね。上に行くにしたがって少し前の方に傾いているあたりは、まるでロックのコンサートでの、シンセをラックに重ねたセッティングみたい。なんか新鮮です。
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今回アルブレヒトが演奏しているホルストの「惑星」は、アメリカのチェンバリスト/オルガニストのピーター・サイクスが、オルガンのために編曲したバージョンです(日本語の「帯」に「ピーター・シークス」とあるのは、冗談でしょう)。1995年に、サイクス自身が録音したCDも出ていますが、その時にはもう一人のオルガニストが加わって「2人」で演奏していました。アルブレヒトは、この2台のオルガンを「1人」で演奏しているのでしょうか。それとも、第1作の「リング」がそうであったように、「オーバーダビング」を行っているのでしょうか。いずれにしても、音をたくさん使った厚ぼったい編曲であることは確かです。
その様な編曲ですから、オリジナルのオーケストラ版を聴き慣れた耳には、この演奏はかなり重厚な印象が与えられます。いや、「重厚」というよりは「鈍重」といった方がより的確でしょうか。なにしろ、「火星」の冒頭の5拍子のリズムは、言いようのない重苦しさをたたえていますし、ファンファーレ風のパッセージも生気の失せたどんくさいリズムでしかありません。この楽章のサブタイトルは「The Bringer of War」、本来リズミカルであるべきものを、「鈍重」なオルガンの響きによって一変させてしまったサイクスとアルブレヒトの意図は明白です。同じように複雑なリズムを持った「水星」や「天王星」のような曲が、ことごとく重苦しい響きで塗り固められるのを聴くのは、辛すぎます。
有名な「木星」の中間部のテーマは、この編曲で聴くとなんとも素っ気ないものに感じられてしまいます。それは、この曲もやはり「鈍重」というコンセプトでまとめられているからなのでしょう。その「聖歌」が、属和音の3音が半音高くなったテンション・コードで終わるようになっているなんて、ディミヌエンドがきかない「鈍重」なオルガンでなければ、まず気づくことなどなかったはずです。
対照的に、「金星」、「土星」、そして「海王星」のような静かな曲では、オーケストラでは味わえないようなハーモニーの妙味に浸ることが出来ます。そこからは、ホルストがこの作品に込めたであろう「神秘性」が、よりはっきりした形で伝わってきます。こちらの側面の方が、オルガンで演奏することの真のメリットだったのではないでしょうか。ここでは、おそらく小さなクワイア・オルガンが多用されているのでしょう、とても鄙びたパイプの音色には和む思いです。

SACD Artwork © OehmsClassics Musikproduktion GmbH
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by jurassic_oyaji | 2011-12-20 23:12 | オルガン | Comments(0)