おやぢの部屋2
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El canto quiere ser luz/Cuban Choral Music
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Digna Guerra/
Coro Nacional de Cuba
Chamber Choir Entrevoces
MDG/602 1704-2




サブタイトルは「キューバの合唱音楽」です。まさか「吸盤合唱音楽」だと思った人はいないでしょうね。それはそれで、いったい、どんな音楽なのかは興味がありますが。
ここでは11人の作曲家による無伴奏の合唱曲が演奏されていますが、その中で聞いたことのある名前はレオ・ブローウェルとルネ・クローゼンだけでした。ブローウェルはキューバ人、しかし、クローゼンはアメリカ人です。その他の作曲家もほとんどはキューバ人ですが、アルゼンチンやヴェネズエラといった「大陸」の人もいます。
ですから、タイトルにはこだわらず、広く「キューバ周辺の合唱音楽」といった受け止め方をすれば、余計なつっこみを入れる必要はなくなります。その他にも、ポップス畑の人としてシルヴィオ・ロドリゲスなどの名前も見かけられますから、ポップ・チューンの合唱編曲版なども登場していることでしょうし。
歌っているのは、もちろんキューバの合唱団。この国の合唱事情など分かるはずもありませんが、なんせあのような国家体制ですから、なにか極端なものが出てくる予感はあります。それこそ、鼻歌に毛が生えたようなユルいものから、冷徹な指導体制のもと、西欧の合唱団にもひけをとらないような訓練の行き届いたものまで、なんでもありです。
そんな憶測をきれいに裏切って、聴こえてきたのはいとも爽やかでチャーミングな歌声でした。おそらく、メンバーはほとんどが若い人なのでしょう。とても素直な声はイノセントなハーモニーをいともたやすくものにしていますし、フレキシブルな感受性は、ここでのかなりヴァラエティに富んだ曲たちに、的確な個性を与えています。
このプログラムの多様性は、なかなかのものでした。なんと、最初に聴こえてきたロベルト・ヴァレーラの「Babalu en Habana Vieja」という曲のテーマは、日本の五音階そのものが使われたものだったのです。テキストはもちろんスペイン語ですが、それがなぜか日本語っぽく聞こえてしまうほどに、それは見事に「日本民謡」もしくは「わらべうた」のテイストを持っていました。同じテーマを延々と繰り返す中で、ちょっとしたパーカッション(歌いながら叩いているのでしょう)が入ってリズミカルな曲調になったとしても、相変わらず「日本民謡」が聴こえてくるという、なんともシュールな作品です。
そんなところで妙な親近感を持ってしまいさえすれば、それに続く曲はいとも素直に心に響いてきます。1曲だけ、なんとも場違いなきちんとしたラテン語による「ミサ」までありますが、それも聴いたとたんに好きになれるものでした。なにしろ、そのセザール・アレヤンドロ・カリッロというヴェネズエラの人が作った「Missa Sine Nomine」は、「Gloria」ときたらまるでプーランクそっくりの華やかなハーモニーに彩られたものですし、「Kyrie」などは冒頭で厳格な4声のフーガが始まったかと思うと、そのままメロディアスなホモフォニーに移行するというしゃれた味をもっているのですからね。
アルバムのメイン・タイトルは、この中では最年少の作曲家、1988年生まれで、まだ芸術大学で作曲を勉強中の女の子、ウィルマ・アルバ・カルが作った、ロルカの詩による「5 Canciones」という「無伴奏合唱組曲」の最後の曲からとられたものです。「歌は光でありたがっている」ぐらいの意味でしょうか。それこそ、日本の合唱団がコンサートで取り上げてもおかしくないような、そこそこ目新しい技法がちりばめられた聴き応えのある作品です。
どの曲にも、必ず感じられる「ラテン」のテイストですが、クローゼンの「Prayer」だけはそれが全く感じられなかったのは、テキストが英語だったからだけではないはずです。彼がこの前のアルバムで指揮をしていたローリゼンと良く似た雰囲気を持つ曲ですが、この合唱団のハーモニーは、その時のアメリカの合唱団をはるかに凌駕しています。

CD Artwork © Musikproduktion Dabringhaus und Grimm
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by jurassic_oyaji | 2012-01-01 19:51 | 合唱 | Comments(0)