おやぢの部屋2
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Across the Sea
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Chinese-American Flute Concertos
Sharon Bezaly(Fl)
Lan Shui/
Singapore Symphony Orchestra
BIS/CD-1739




アメリカで活躍している3人の中国系作曲家のフルートとオーケストラのための作品を集めたアルバムです。もちろん、フルートを演奏しているのはシャロン・ベザリーです。これは一応新譜ではあるのですが、収録されている4曲のうちの2曲はすでにリリースされていたもの、そして今回の「新曲」も録音されたのは2008年という「大昔」ですから、あまり気合いが入っていないように思えてしまいます。何よりも、最近の彼女のアルバムはほとんどSACDだったのに、これはふつうのCDです。もしかしたら、この中で一番古い録音が2000年のものですから、それがSACDの「ハイレゾ」に対応できなかったせいかな、とも思ったのですが、録音機材はGENEXGX8000、今ではもう見かけないMOレコーダーですが、しっかり24bit/96kHzのスペックを持ったものでした。ですから、その音源をDSDに変換しても問題はないはずです。となると、もはや彼女がこのレーベルで「特別扱い」されることがなくなった、ということなのでしょうか。
実際に、以前SeascapesというタイトルのSACDに入っていたジョウ・ロン(周龍)の「The Deep, Deep Sea」という2004年の作品を、今回のCDと聴き比べてみると、その違いは歴然としています。ピッコロやヴァイオリンの質感が全く別物なのですね。
そういえば、最近のBISのクレジットには、ロベルト・フォン・バールの名前は見あたらなくなっています。そのことと、今回の扱いとは、なにか関係があるのでしょうか。彼女の「ファン」としては、とても気になるところです。
ジョウ・ロンの作品はもう一つ、2008年に作られた「Five Elements」。「木火土金水」という、中国の五行思想に登場する5つの元素を、演奏効果を上げるために「金、木、水、火、土」と並び替えて、それぞれを音で描写するという分かりやすい曲です。間に入っている「木」と「火」が激しい曲想として対比を作っています。「金」では、文字通りさまざまな金属打楽器が煌びやかな世界を演出していますが、これをSACDで聴いたらな、さぞや「金!」という感じがしたことでしょう。CDではブリキのおもちゃみたいにしか聴こえませんから。ここでベザリーは、フルート、ピッコロ、アルトフルートと3種の楽器を使い分けてそれぞれの情景を描ききっています。こういう音楽だったら、彼女の変なクセも全く気になりません。まさに、彼女の超絶技巧に酔いしれるばかりです。「水」のカデンツァなどは、圧巻ですよ。
2000年に録音され、作曲家の名前のタイトルのアルバム(CD-1122)に収められていたのは、その前年に作られたブライト・シェン(盛宗亮)の「Flute Moon」でという2つの部分に分かれた作品です。最初の部分はピッコロがフィーチャーされ、まるで「ゴジラ」のテーマのようなバーバリズム満載の音楽になっています。ごじらは、タイトルが「Chi-Lin's Dance」、中国の架空の怪獣「麒麟」がモチーフになっています。なんでも、「麒」は雄で「麟」は雌なんだそうですね。ですから、ここではオーケストラが「雄」、ピッコロが「雌」を演じているのだそうです。
それとは対照的にフルートとオーケストラによるリリカルな後半が「Flute Moon」。これは、12世紀頃の中国の詩人が作ったメロディが元になっているそうで、いかにもなチャイニーズ趣味がふんだんに味わえます。
最後の曲、チェン・イ(陳怡)の「The Golden Flute」は、アルバムの中では最も聴き応えのある作品なのではないでしょうか。そもそも、作曲家はフルートに中国古来の管楽器のような音色や奏法を要求したということですから、フルーティストにとっても真剣勝負、とても高い次元での「融合」が実現しています。しかし、やはり求められるテクニックはハンパではありませんでした。さすがのベザリーでも明らかにてこずっているな、と思えるところがあちこちに。それが言いようのないインパクトを生んでいるのですから、作曲家の目論見はまんまと成功したことになります。

CD Artwork © BIS Records AB
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by jurassic_oyaji | 2012-01-05 20:35 | フルート | Comments(0)