おやぢの部屋2
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BOCCHERINI/Chamber Music with Flute & Oboe
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Gergely Ittzés(Fl)
László Hadady(Ob)
Márta Ábrahm(Vn)
Péter Bársony(Va)
Ditta Rohmann(Vc)
HUNGAROTON/HCD 32695




ハンガリーの若いフルーティスト、ゲルゲイ・イッツェーシュの新しいアルバムです。日本酒が好きなんでしょうね(それは「一級酒」)。「若い」とは言っても、1969年生まれですから、もうすでに40代前半、どちらかというともはや「中堅」の域に達しているのでしょう。イシュトヴァン・マトゥスと、オーレル・ニコレから多くのものを学んだということですから、その演奏に対する姿勢はなんだか想像できてしまいます。あくまで音楽に真摯に立ち向かい、フルート以外のレパートリーも貪欲に演奏、そして現代作品なども積極的に取り上げる、といった感じなのでしょうか。さらに、マトゥスなどは自作も演奏していましたが、イッツェーシュの10枚ほどのディスコグラフィーにも、彼自身の作品を演奏したものがありました。
今回取り上げていたのは、ボッケリーニです。例の「メヌエット」だけが突出して有名な作曲家ですが、その他の何百曲もある作品はあまり演奏されることはありません。フルートが加わった作品もいくつかありますが、実際に手元には1枚のCDしかありませんでした。
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Auser Musiciという団体が演奏しているそのCDHYPERION/CDA67646)では、「作品19」という6曲のフルート五重奏曲を聴くことが出来ます。これは、弦楽四重奏にフルートが加わったという編成になっていて、そこでのフルートはもっぱらアンサンブルの一員としてのあまり目立たないような役割しか与えられてはいないような印象がありました。この編成の作品は、その他にも何セット(当時は、6曲まとめて出版される習慣がありました)かあるようですね。
しかし、ここでイッツェーシュたちが演奏しているのは、ボッケリーニの作品表では見つけることの出来ない、「フルート四重奏曲」という、モーツァルトでお馴染みの弦楽四重奏のファースト・ヴァイオリンがフルートに置き換わった編成のものです。一応この曲に付けられている「G.260」という、イヴ・ジェラールによる作品番号を頼りに探してみると、それは「弦楽四重奏」であることが分かりました。しかも、これはボッケリーニ以外の人が彼の名前で出版したもののようでした(「作品5」となっていますが、これはボッケリーニの場合はヴァイオリン・ソナタです)。つまり、ここでは「偽作」を「編曲」したものが演奏されているのですね。
このCDには「世界初録音」という表記があります。確かに、その様なものであれば、ここで演奏されたものは初めての録音になるのでしょう。それならそれできちんと表記すればいいものを、なんだかフェアではないような気がしてしまいます。というか、イッツェーシュ自身のライナーノーツは、これがボッケリーニの作品であるという前提で書かれているようですので、そもそも偽作や編曲という認識がないようなのですね。こういうことは、ニコレの教えに背くのでは。
でもまあ、ここは言葉通りに受け取って、「初めて」録音されたというフルートと弦楽器のための四重奏曲と、フルート、オーボエと弦楽器のための五重奏曲(これも、おそらく偽作)を楽しむことにしましょうか。
ここでフルーティストは、彼のサンキョウの銀製のフルートに、いつも使っている金製の頭部管ではなく、木製の頭部管をつないでいます。そこから生まれる柔らかい響きは、確かにこの時代の雰囲気を存分に再現しています。特に、はかなげな低音と、彼の他の演奏を聴いたことがないので確証はないのですが、バロック風の「表現のため」のビブラートが、なんとも言えない味を出しています。なかでも、ゆっくりとした楽章での彼のフルートは、ほとんど涙を誘うほどの強烈な情感が伝わってくるものでした。もちろん、早い楽章での目の覚めるような鮮やかなパッセージも素晴らしいものです。それは、「真作」と信じていたからこそ生まれたテンションなのでしょう。

CD Artwork © Hungaroton Records Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2012-01-13 21:41 | フルート | Comments(0)