おやぢの部屋2
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Besides Feldman
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Patrick Pulsinger(Syn)
Pamelia Kurstin(Theremin)
Hilary Jeffery(Tb)
Rozemarie Heggen(Cb)
COL LEGNO/WWE 1CD 20298




いかにも「現代音楽」といった面白いアルバムを出してくれるので、この「コル・レーニョ」というレーベルには楽しませてもらっています。このレーベル名は、松島の名産(それは「こうれん」)ではなく、弓をひっくり返して木の部分で演奏するという、あの特別な弦楽器の奏法に由来しているのだそうです。ベルリオーズの「幻想交響曲」の最後の楽章で、気持ちの悪い音を出すために使われるのが有名ですね。その様に、かつて誰かが発想を転換させて弦楽器のサウンドの幅を広げたのと同じように、このレーベルも既成概念にこだわらないクリエーターによって作られた、よりパワフルな音楽を提供していきたいのだそうです。
そういう意味では、このアルバムなどはまさに「パワフル」そのものなのではないでしょうか。ドイツの「前衛」作曲家、パトリック・プルジンガーが、他の3人の音楽家と一緒に行った2010年の「ウィーン・モデルン」での演奏のライブ録音、なんでもこのレーベルのプロデューサーがこの演奏を聴いて、即座にCDを作ることを決めたという強いインパクトを持ったものです。
かつての「前衛」が頼ったのが、エレクトロニクスです。今ではシンセサイザーという便利なものがありますから、ここでプルジンガーもそれを縦横に駆使しています。そこで安直なプリセットものは使わず、あえて手のかかるモジュラー・タイプを選んだあたりが、「前衛」の誇り、でしょうか。そこに、もう1台、「テルミン」が加わります、しかし、これを操るパメリア・カースティンは、クララ・ロックモアが拓いたこの電子楽器のリリカルな地平からは遙か遠くの場所に立っているように思えます。正直、最初のうちはどれがテルミンの音なのか分からないほど、それは「テルミンらしくない」姿をさらしていました。
さらに、ヒラリー・ジェフリーのトロンボーンと、ロゼマリー・ヘッゲンのコントラバスという生楽器が加わります。もちろん、こんな仲間とやり合うのですから、楽器本来のまともな奏法などはなんの役にも立ちません。管楽器はミュートを付けたりマウスピースだけで演奏したり、弦楽器もハーモニクスで囁くような音を出したりと、こちらも聴いただけではなんの楽器だか分からないような響きが、適度な緊張感を誘います。
そんな4人のセッションで出来上がった作品、タイトルでは「フェルドマン以外の」といっていることとは裏腹に、そのアメリカの作曲家の音楽がもたらすのと同質の浮遊感が全体を支配しているようです。7つのパートが連続して「演奏」されていますが、それぞれには「Timeless Floating Music」とか「Patterns Not Loops」といった、即物的なタイトルが付けられているのが面白いところ、お陰で、下手な先入観を与えられることはなく、その、まさに漂う様な音楽に身を任すことが出来ます。
さまざまなアイディアが登場しますが、中でも存在感を誇っているのが、先ほどのテルミンです。実は以前、この楽器の現代における名工、ロバート・モーグのドキュメンタリーの中で、テルミンからまるでベースのピチカートのような音を出して驚かせてくれた女性が登場していたのですが、それがこのカースティンその人だったのですね。作品の前半では、彼女が作り出す重低音のパルスに全体が支配されているような印象すらありました。その低音の音圧はものすごいもので、まるでスピーカーが壊れそうな迫力です。マスタリングまでプルジンガーが手がけているようですから、そんな破壊的な音場までが計算されているのでしょうね。
かと思うと、後半にはアコースティック・ベースに導かれて、まるでジャズのセッションのようなまったりとした風景が登場します。もちろん、ソロを取るのはトロンボーンですが、今度はテルミンがそれを模倣してフレーズのやりとりを始めましたよ。
とても懐の深い音楽を味わったな、という満足感に包まれたアルバムでした。

CD Artwork © col legno Produktions
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by jurassic_oyaji | 2012-01-19 20:19 | 現代音楽 | Comments(0)