おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
New Favourites/Modern Swedish masterworks for choir
c0039487_2081443.jpg



Simon Phipps/
The Swedish Chamber Choir
MUSICA REDIVIVA/MRSACD-103(hybrid SACD)




北欧には素晴らしい合唱団がたくさんありますが、また一つ、お気に入りに加わったのがこの「スウェーデン室内合唱団」です。エリクソンが作った合唱団に似たような名前のものがありましたが、それとは全く関係のない、2007年に出来たばかりの、いわばニューカマーですね。あ、ニューハーフやオカマとは、これも全く関係がありませんからね。
一応、この名前になったのはそんな最近のことですが、それよりも10年近く前から、イギリスで生まれ、イギリスの合唱音楽の伝統をどっぷり身につけたのち、スウェーデンのイエテボリに移住した指揮者、サイモン・フィップスのもと、「サイモン・フィップス・ヴォーカル・アンサンブル」という名前の団体が活躍していました。それがリニューアルされて、今の名前の団体になったと言うことですね。すでに、「SPVE」の時代から、スウェーデンのFOOTPRINTレーベルに何枚かのCDを録音していましたが、今回は同じスウェーデンのMUSICA REDIVIVAから、SACDがリリースされました。これが、演奏、録音とも、とても素晴らしいものでした。
アルバムのコンセプトは、「スウェーデンの合唱音楽の60年を振り返る」といったもののようです。もちろん、それは厳格なものではなく、あくまで合唱団の今までの「お気に入り」の中で、聴衆のウケの良かったものを集めただけなのでしょうが、確かにここにはある一定の時間の中での作曲技法の変遷の跡がくっきりみられるような、「歴史」が、意図的に企んだわけではなくとも、はっきりと見えてきます。
例えば、1943年に作られたマルムスフォシュの「月影」と、1953年に作られたリードホルムの「4つの合唱曲」を比べれば、ロマンティックの名残を秘めていた時代が、いきなり「12音」の洗礼を受けて戸惑っている様子がくっきり分かってしまいます。
しかし、それは別に眉間に皺を寄せて講釈を聴く、といった堅苦しいものでは、もちろんありません。なんといっても、この合唱団の表現力はとてもすがすがしく、その曲のメッセージを受け取るために身構えたりすることは全く必要がないのですからね。完璧なハーモニーと、爽やかな音色に身を任せているだけで、音楽が一人で体のなかに入ってくるという、とても幸せな関係の作り方を、この合唱団はしっかり身につけているのでしょう。「12音」にしても、どこぞの合唱団のように力で押しまくったりしなくても、すんなり伝えるすべを会得しているのでしょうから、ここからは、うっとうしさとは無縁の、ひたすら心にしみる音楽が響き渡ります。
有名なサンドストレム(スヴェン・ダヴィッドの方)の、これもお馴染み、パーセルの未完のモテットの断片を再構築した「Hear my Prayer, O Lord」を、同じスウェーデンの「スウェーデン放送合唱団」の演奏と比べてみると、そんな「脱力感」は良く分かります。パーセルがこれほどまでに「滑らか」に「崩れて」いくなんて。
驚くべきことに、最後の3つのトラックでは、それまでとは全く異なる民族的な発声も披露してくれています。最後のレイクイストの「天の国」は、「キュールニング」という、遠くの山にまで届くような鋭い声の出し方まで取り入れられている作品ですが、そんな、ごく限られた人でなければ出せないような特殊なものを、メンバーは見事にものにしています。もちろん、SACDはそのインパクトを完璧に伝えてくれています。
このレーベル、プロデューサーは藤本ベルガー-里子という日本人なのですね。確かに、カタログにはBCJのオルガニスト、今井奈緒子さんのアルバムなどもありました。ですから、ブックレットには最初から日本語のテキストが印刷されています。これは感動的ですね。ただ、対訳で16曲目と18曲目が入れ替わってしまっているのが、ちょっと残念です。

SACD Artwork © Musica Rediviva
[PR]
by jurassic_oyaji | 2012-02-04 20:09 | 合唱 | Comments(0)