おやぢの部屋2
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BACH/St John Passion
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Derek Chester(Ev)
Douglas Williams(Jes)
Simon Carrington/
Yale Schola Cantorum
Yale Collegium Players(by Robert Mealy)
REZOUND/RZCD-5017-18




なんたって「版マニア」ですから、「ヨハネ」の第2稿などがひょっこり見つかったりすれば、多少古いものでも紹介したくなってしまうのは、自然の性です。古いとはいっても、録音されたのは2006年ですが、リリースは2008年ですから、まだまだ「新譜」の範疇ですし。
演奏団体はまったく初めての名前ですが、それもそのはず、ここで歌っている「エール・スコラ・カントルム」というアメリカの合唱団は、2003年に作られたばかりなのですね。ここを創設して、その指揮を行っているのが、サイモン・キャリントンです。と言ってもご存じのない方もいらっしゃるかもしれませんね。○ンコみたいな形をした甘いお菓子じゃないですよ(それは「カリントウ」)。彼はあの有名なイギリスのヴォーカル・グループ、「キングズ・シンガーズ」のオリジナル・メンバーの一人です。パートはバリトン、背が高く、いかにも「イギリス紳士」といった風貌の持ち主でしたね。彼はいつの間にかアメリカに渡って、エール大学音楽院の教授になっていたのですね。作曲家、指揮者として成功しているボブ・チルコットやビル・アイヴスなどに続いて、やはり「シンガーズ」のOBが合唱界で活躍している姿をCDで聴くことができる機会が訪れました。
この合唱団は、「1750年以前と、最近の100年間」の音楽を演奏するために作られたものなのだそうです。つまり、バロック以前と(いわゆる)現代音楽をレパートリーにしているのでしょう。「クラシック」と「ロマン」をすっぽり抜いた、というあたりが、なかなか潔いところです。メンバーは24人、エール大学の学生の中からオーディションで選抜されています。写真を見るとアジア系の顔も見られます。
そもそもアメリカの団体による「ヨハネ」自体が珍しいのに伴奏しているアンサンブルはピリオド楽器、しかも、もっと珍しい「第2稿」の全曲盤(この前のファン・デア・メール盤のように、一部で別の稿が使われていることはないようです)、という珍しいものづくしのCDということになります。
珍しいといえば、これはニューヘイヴンとニューヨークの全く別の教会で行われたコンサートのライブを、それぞれ別のエンジニアが録音したものを編集したという変則的なものです。どちらかのテイクがメインで、問題のある箇所を別のテイクに差し替えたのでしょうが、それは見事な編集が行われていて、どこが別の録音なのかは絶対に分かりません。それにしても、この教会のお客さんのやかましいこと。
そんな行儀の悪い聴衆の前だからでしょうか、この演奏はなにか集中力の欠けた散漫なもののように感じられます。何よりも、合唱と楽器とがあまり寄り添っているようには聴こえてこないのですね。クレジットには、コンサートマスターがわざわざ「ディレクター」と書かれています。もしかしたら、アンサンブルはこの人にお任せで、キャリントンはもっぱら合唱の指揮に専念、といった感じだったのでしょうか。コラールなどは、きちんと自分のやりたいように、かなり特徴的なフレージングで雄弁な音楽を伝えてくれていますが、レシタティーヴォの中の合唱が、時折空回りしているように感じられるのが残念です。
ソリストたちは、どうもあまり調子が良くなかったようですね。エヴァンゲリストのチェスターはとても伸びのある声なのですが、低い音域ではコントロールが決まりませんし、他のソリストもことごとくライブならではの醜態をさらしています。合唱も、最後の「Ruht wohl」あたりになると、もう息も絶え絶えという感じです。長丁場は辛いですね。
ただ、続く最後のコラールのあとに、なぜか「バッハの時代の習慣にのっとって」ア・カペラの合唱で歌われた16世紀スロベニアの作曲家ヤーコブ・ハンドルのモテットが、とても清楚で和むものでした。ちょっとバッハでは荷が重かったこの合唱団の本領発揮だったのかもしれません。

CD Artwork © Loft Recordings
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by jurassic_oyaji | 2012-02-27 20:02 | 合唱 | Comments(0)