おやぢの部屋2
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SIBELIUS/Symphonies Nos 2 & 5
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Osmo Vänskä/
Minnesota Orchestra
BIS/SACD-1986(hybrid SACD)




ヴァンスカのシベリウスといえば、1990年代に同じBISにラハティ交響楽団と録音した交響曲全集(+異稿)がありましたが、今回は約20年ぶりに、現在の任地、ミネソタ交響楽団との新録音です。同じ指揮者が、同じレーベルに同じ曲を録音することなどは、あのヘルベルト・フォン・カラヤン以外には許されないと思うかもしれませんが、まあオーケストラが違うので大目に見ることにしましょうか。全曲録音に先立って、まずは「2番」と「5番」という、人気TOP2のカップリングが登場です。
違うのはオーケストラだけではありませんでした。前回はCDでしたが、今回はSACDです。もしカラヤンが生きていたら、5回目となるベートーヴェンの交響曲ツィクルスは、SACDになっていたのかもしれませんね。それも、サラウンドで。実際、彼はサラウンドの前身の「クォドラフォニック」という「4チャンネル」を、1970年代のEMIで試みていますからね。この間取り上げたチャイコフスキーの交響曲もその一例、ただ、それは今日のSACDのような澄みきった音ではなく、4チャンネルから2チャンネルに変換した際の歪みに、ミシェル・グロッツの趣味も加わって、濁りに濁ったとんでもない音になっていましたね。
グロッツとは違って、BISのエンジニアの耳は確かですから、たとえ2チャンネルステレオで聴いても、そのクオリティが下がるようなことは全くありません。というより、最近のBISSACDの音は、一段とすごさが増したような気がするのですが、どうでしょうか。あたかも、アナログ録音の黄金期を作った1960年代のDECCAを聴いた時のような豊潤さが、デジタル録音でも再現できるほどのノウハウを、このレーベルは獲得したのではないでしょうか。そんな自信の表れが、もしかしたら前回のストラヴィンスキーの時にも指摘した「オリジナル・フォーマット」の表示なのかもしれません。その時には「24bit/44.1kHz」だったものが、今回は「24bit/96kHz」ですから、スペック的にはさらに余裕を持って「生々しさ」を表現できることでしょうし。
そんな、ワンランク上がった録音の上に、アメリカのオーケストラということで、20年前のフィンランドのオーケストラとは全く異なった響きが体験できることになります。ベートーヴェンの場合には、ベーレンライター版を使っていることもあっておそらく意識的に木管などは「渋め」の音色に徹底されていたようですが、シベリウスの場合はそんなシバリからは逃れて、このオケ本来の輝かしさを前面に出しているように感じられます。特に金管楽器が、まさに「アメリカ」という、「華やか」というよりは「粘りのある」響きで迫ってきます。このあたり、ラハティの「乾いた」音とは全く違っていて、それが音楽そのものにも非常に大きな違いとなって現れてきています。
さらに、音色だけではなく、そんな管楽器奏者の演奏に対するキャラクターの違いも、見逃すわけにはいきません。ミネソタの人たちの積極的に個人を主張しようとする姿勢(もちろん、それはあくまでも強固なアンサンブルは維持した上でのことですが)が、音楽にとても「立体的」な印象を与えているのですね。実際、SACDによって、音像そのものが「立体的」に聴こえてくることと相まって、それぞれのキャラクターはより「立って」来ることになりました。言ってみれば、ラハティは和紙の上に墨で描いた水墨画、それに対してミネソタはキャンバスに絵の具を塗り重ねた油絵でしょうか。
しかし、ヴァンスカのデッサン、つまり下書きは、どちらも変わっていません。あくまで大げさな身振りを押さえた、それでいて雄弁な音楽が、そこには共通して存在していました。思わずハッとさせられる超ピアニシモは、今回も健在でしたし。
残りの交響曲の録音が終われば、その時の気分で選びたくなるような、まるで着せ替え人形みたいな新旧のツィクルスが出来上がるのでしょうね。

SACD Artwork © BIS Records AB
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by jurassic_oyaji | 2012-03-06 23:03 | オーケストラ | Comments(0)