おやぢの部屋2
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ORFF/Carmina Burana
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Maria Venuti(Sop), Ulf Kenklies(Ten), Peter Binder(Bar)
Günter Wand/
Hamburger Knabenchor St. Nikolai
Mitglieder des Opernchors des Niedersächsischen
Staatstheaters Hannover, NDR Chor und Sinfonieorchester
PROFIL/PH05005




「レコード芸術」の最新号の月評に、こんな珍しいCDが取り上げられていました。これは、実はすでに2005年にはしっかり輸入盤として流通していたものなのですね。それを今頃国内盤仕様で出すというのは、ヴァントの記念年(生誕100年、没後10年)を当て込んでのことでしょう。代理店の思惑通り、2人の評者はこぞって「推薦」をつけてくれましたから、晴れて「特選盤」の看板を背負って過剰在庫を売り切ることが出来るのでしょう。「得せん」どころか、大儲けです。それにしては、この評者たちのコメントが、揃いも揃って「ぜんぜん褒めてない」のが、気になります。
これは、1984年に北ドイツ放送(NDR)によって録音された放送音源です。ハンブルクで行われたコンサートのライブ録音、ということになっています。ヴァントが72歳の時の演奏ですね。
特に会場ノイズも聴こえず、あまり目立たない楽器などもしっかり聞こえてくるという、鮮やかな録音であることに、まず一安心です。1曲目の「O Fortuna」の最初のトゥッティも迫力満点、合唱もかなり力のある団体のように感じられます。ただ、それに続く、合唱が囁くように歌う部分になると、なんだかやけにもっさりとした感じになってしまいました。おそらく、あまりアクセントを付けないで歌っているせいなのでしょう。ところが、同じパターンなのに楽器が増えて少しテンポが上がると、俄然様相がかわって攻撃的になってきます。これはかなりショッキング、ちょっと油断していたら、あっさり足下をすくわれてしまった、という感じでしょうか。
この手で、ヴァントは特に合唱について、実にさまざまな「技」をかけてきます。3曲目「Veris leta facies」では、プレーン・チャントのようなゆったりとしたテーマを、前半と後半でしっかりダイナミックスを変えて、あたかも「問い」と「答え」のように扱うことで、立体的な味を出すことに成功しています。同じように、8曲目の「Chramer, gip die varwe mir」では、ハミングだけで歌われる部分が、実に豊かな表現力を発揮しています。そんなちょっとした気遣いが、他の演奏ではなかなか見られないだけに、ヴァントの演奏はとても暖かいものに感じられます。19曲目の男声合唱も、とても豊かな表情、おそらく彼は、オスティナートを多用したある意味無機的なこの作品から、もっと柔らかさを引き出したいと思っていたのではないでしょうか。
12曲目、「Olim lacus colueram」では、ヴァントはオーケストラにちょっと変わったことを要求しています。
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いや、実は単に「楽譜通り」に弾け、というだけのことなのです。フルートのこの音型(次にシロフォンとミュートを付けたトロンボーンにも出てきます)は、本当は三十二分音符4つ+八分音符という譜割りなので、「タカタカタン」というリズムになるのですが、慣習として前の音符はもっと細かく「トレモロ」で演奏されています(パート譜に、手書きでそんな指示があります)。つまり、フルートの場合は「フラッター・タンギング」で演奏するのが、一般的なのですね。それを敢えてヴァントは「楽譜通り」演奏しています。これも、なかなかチャーミング。
そんな珍しいことも交えつつ、この演奏はライブならではのノリの良さ(「やる気満々」のバリトン・ソロも聴かせます)でとても楽しめました。手元には30種類の「カルミナ」が集まってしまいましたが、その中でもかなりの上位にランキングされるものになっていますよ。だから、堂々と誉めてやっても良いと思うのですがね。
ただ、このCDは9曲目と12曲目でトラックの頭が変なところに入っています。続けて聴く分には関係ありませんが、12曲目などは、トラック・ボタンを押すとさっきの楽譜の部分から始まってしまいます。本当はその前にあるはずのファゴット・ソロは、ここでは前の曲の最後なんですね。だからこれは「欠陥商品」、とても「推薦」なんかできません。

CD Artwork © Profil Medien GmbH
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by jurassic_oyaji | 2012-03-10 21:10 | 合唱 | Comments(0)