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MOZART/Piano Concertos Nos. 20 & 21
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Arthur Schoonderwoerd(Fortepiano)
Cristofori
ACCENT/ACC 24265




アルテュール・スホーンデルヴルトという、一度言われただけでは絶対に頭に入らない名前のオランダのフォルテピアノ奏者は、数年前ベートーヴェンのピアノ協奏曲を全部「1パート1人」という編成のオーケストラ(?)をバックに録音して、話題になりましたね(レーベルはALPHA)。さすがにベートーヴェンではオーケストラだけの部分ではあまりにしょぼ過ぎる音でちょっと無理があるように感じられましたが、今回はレーベルをACCENTに移して、モーツァルトの協奏曲を録音してくれました。これは、とても素晴らしい演奏、そして録音です。確かに春への一歩を踏み出そうとしている、まさに今の季節にぴったりの爽やかな印象を与えてくれるものでしたよ。
使われている楽器は1782年のアントン・ワルターのコピーということですが、まずこの音の素晴らしさに惹きつけられてしまいました。「20番」のイントロでは楽譜にある低音だけではなく右手のコードまでしっかり弾いているのですが、その音がとてもすっきりしているのです。フォルテピアノ特有の、ちょっと鈍目のアタックではなく、まるでチェンバロのようなくっきりとした音の立ち上がりなのですね。そして、そのままの音でソロが登場するわけですが、裸になって現れたその楽器の音は、録音会場であるブザンソンのノートル・ダム教会の豊かなアコースティックスにも助けられて、倍音成分がまるで高い天井に昇っていくような魅力的な響きを放っていたのです。常々フォルテピアノを聴くときには、まるでホンキー・トンク・ピアノのような濁った響きがいつもつきまとっていて、なにかこの楽器に「不完全さ」を感じていたものでした。しかし、それはまさに今まで「不完全」な状態の楽器しか聴いたことがなかったことを、この「完全に」チューニングが行われている楽器を体験して、初めて知るのでした。これは、なんという魅力的な楽器だったのでしょう。
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もう一つ、このCDで初めて知ったことがありました。スホーンデルヴルトが指揮も行っているこの「クリストフォリ」というアンサンブルは、写真のようにフォルテピアノのまわりを取り囲んでみんな立ったままで演奏しています。そして、ベートーヴェンの時と同じように「1パート1人」のはずが、なぜかヴィオラだけ「2人」の奏者がいます。なぜだろうとスコアを見ると、確かに「第1ヴィオラ」と「第2ヴィオラ」の2つのパートに分かれているではありませんか。交響曲でも、「32番(K318)」から「38番(K504)」の間は、全て「Viola I,II」という表記なんですね。この2曲の協奏曲はK466-467ですから、ちょうどこの間のものです。この時代に弦のパートが「6部」になっていたなんて、知ってました?
この写真で分かるとおり、これは「協奏曲」というよりはちょっと大きめのアンサンブルという感じで、お互いに相手を聴きながら演奏が進んでいきます。「20番」の第1楽章などは、ソロが出るところは完全にビート感による拘束がなくなり、フォルテピアノは思う存分に歌い上げてくれます。こういう自由さが思う存分発揮されて、今まで聴いてきたのとは全く違ったモーツァルトの世界が拡がります。もちろん第2楽章のフォルテピアノは、装飾満載、アルペジオを多用したかわいいフレーズが、とってもキャッチーです。そして、第3楽章のユルさには、思わず「やられた」という感じですね。この楽章でこれほど和むことが出来るなんて。
弦楽器が1本ずつでも、なんの違和感もありません。盛り上がるところでは、しっかり金管やティンパニが助けてくれますしね。それよりも、「21番」の第2楽章で、あの素敵なテーマがヴァイオリン・ソロで歌われるときの、なんと美しいことでしょう。
ACCENT(アクサン)ではこのアルバムを皮切りに、全集の完成を目指しているのだそうです。こんな驚きがもっとタクサン味わえるなんて、本当に楽しみです。

CD Artwork © Accent
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by jurassic_oyaji | 2012-03-12 20:52 | ピアノ | Comments(0)