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PENDERECKI, GREENWOOD/ Threnody for the Victims of Hiroshima etc.
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Krzysztof Penderecki, Marek Mos/
Aukso Orchestra
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ペンデレツキが、自作の中でもひときわ「前衛的」とされる「広島の犠牲者のための哀歌」と「ポリモルフィア」という1960年代初期の2作品を、2011年に新たにみずから指揮をして録音したものが登場しました。とは言っても、このアルバムはそれがメインではないのが情けないところです。
これは、ジョニー・グリーンウッドという、さる地方都市の合唱団(それは、「グリーンウッド・ハーモニー」)みたいな名前の作曲家が作った、弦楽オーケストラのための「現代曲」の初録音です。聞き慣れない名前ですが、実はこの方は「クラシック」の作曲家ではなく、イギリスの有名なオルタナティブ・ロックバンド、「レディオ・ヘッド」のギタリストなのですよ。いや、たかがロック・バンドなどとバカにしてはいけません。「オルタナ」ともなればジャズやクラシック、さらには「現代音楽」までをも取り入れたスタイルというものが確立しているのですからね。
そもそも、グリーンウッドという人は、しっかりとした音楽教育を受けて「クラシック」の素養がありました。それだけではなく、初期のペンデレツキやメシアンなど、彼が生まれる前に世の中で騒がれた「現代音楽」にも、深いリスペクトを捧げていたのですね。なんたって、彼はバンドの中ではギターの他にメシアン御用達の「オンド・マルトノ」まで演奏しているのですからね。
今回は、バンドではなくしっかり弦楽オーケストラのために書き上げたスコアが演奏されています。2曲あるそれぞれが、さきほどのペンデレツキの作品としっかりリンクした作られ方をしているということで、それぞれの「元ネタ」を紹介する、という位置づけが、ここでのペンデレツキの役目なのです。それだけのために、わざわざ新録音を行ったペンデレツキって。
「広島」を下敷きにした作品が「ポップコーン・スーパーヘット・レシーバー」です。「スーパーヘット」という、辞書には載っていない言葉が登場しますが、これは「5球スーパー」という、今では知っている人の方が少ないラジオ用語の中の「スーパー」と同じ、「スーパーヘテロダイン」の略語です。つまり、そんなラジオで発生するホワイトノイズを、ペンデレツキが使ったのと同じ「弦楽器のクラスター」で表現しているのですね。ただ、それはメインではなくあくまで「効果音」的な使い方、メインはもっとキャッチーな、まるでマントヴァーニのような「カスケイディング・サウンド」だというあたりが、いかに「オルタナ」とは言っても「商業音楽」に身を置いている作曲家の資質なのでしょうか。さらに、途中からは、いきなりリズミカルな、今度は「バルトーク・ピチカート」で迫るパートも登場しますよ。
もう1曲の「ポリモルフィアへの48の答え」では、あのキューブリックの「シャイニング」のサントラでも使われた薄気味悪い趣の作品「ポリモルフィア」への、逆のベクトルのオマージュが見られます。「元ネタ」では、お約束のクラスターや、「あえぎ声」のようなヴァイオリン・ソロなど、いろいろごちゃごちゃやったあげくに、最後はハ長調のピュアな響きで終わるというサプライズが待っていましたが、こちらはハ長調のアコードを先に提示して、それを次第に「壊して」いくという、まるでニューステットの「イモータル・バッハ」のようなプランの作品です。事実、バッハのコラール風のパッセージも聴こえてきますし。
ペンデレツキへのリスペクトから生まれた曲の割には、どちらも極めてキャッチーな仕上がりになっているのはなぜなのでしょう。おそらく、グリーンウッドは「元ネタ」の前衛さの中に、既に現在の「ロマンティック」な作風の萌芽を読みとっていたのでしょう。いや、あるいは、いかに変節しようが、単にペンデレツキの全人格を受け入れられるだけの「優しさ」を持っていただけなのかもしれません。

CD Artwork © WEA International Inc.
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by jurassic_oyaji | 2012-03-24 20:44 | 現代音楽 | Comments(0)