おやぢの部屋2
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BRAHMS/Symphonies
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Andrew Manze
Helsingborg Sypphony Orchestra
CPO/777 720-2(hybrid SACD)




2006年にスウェーデンの小都市ヘルシングボルイのオーケストラの首席指揮者となるまでは、バロック・ヴァイオリンの名手としてピリオド楽器の世界で大活躍していたアンドルー・マンゼは、HARMONIA MUNDIベートーヴェンの「エロイカ」や、HYPERIONのステンハンマーなどのピアノ協奏曲など、多くのレーベルに、まんず精力的に「指揮者」として録音を行ってきました。今回は、初めてとなるCPOからブラームスの交響曲全集を、なんとSACDで出してくれました。
ただ、シングルレイヤーのSACDでしたら、交響曲全4曲は2枚に収まってしまいますが、あいにくハイブリッドだったため、3枚にならざるを得ませんでした。そうなると余白が多くなりすぎるので、「ハイドン・ヴァリエーション」、「悲劇的序曲」、「大学祝典序曲」もカップリングされています。
「エロイカ」の時には、なんとも中途半端なスタンスで演奏しているという感じがしていたので、正直がっかりしてしまいましたが、今回のブラームスはひと味違います。現在は61人しかメンバーがいないという少人数のオーケストラのフットワークの良さを生かして、なかなか「軽やか」なブラームスを聴かせてくれていました。
しかし、ブラームスの場合「軽い」というキャラクターはあまり歓迎されません。なんといっても、本当のブラームス・ファンは「重く」て「粘っこく」て「暗い」演奏が好きなのでしょうから、そんな人にとっては「軽い」ブラームスなど論外、そんなもの聴きたくもないと思うことでしょう。
とびきり「暗い」と相場が決まっている「交響曲第1番」が、まずそんな軽やかな足取りで始まったのですから、ちょっとびっくりです。冒頭のティンパニやコントラバスの刻みが、まるで「駆け足」のようなテンポなのですからね。しかし、常々重苦しいブラームスには食傷気味の人にとっては、逆にこれは親しみやすく感じられるのではないでしょうか。テンポが速いだけではなく、一つ一つのフレーズの扱いが、いともあっさりしているのですね。これこそが、マンゼがいままでのフィールドで培ってきた持ち味です。もしかしたら「邪道」と思われるかもしれなくても、おそらく彼は自分が一番気持ちよいと感じられる音楽を推し進めようとしているのではないでしょうか。
この曲の最後の楽章なども、もったいぶった素振りなどは一切ありません。ホルンとフルートが、本来ならば、まるで「雲間からさす一条の光のような神々しさ」みたいなものを表現しようとするのでしょうが、ここにはそもそも「雲間」すら存在していなかったのですから、そんな「くさい」演出は必要ありません。過度なドラマなど入り込む隙がないほどに、「あるがまま」の音楽が流れていきます。当然のことながら、大詰めで現れる金管のコラールも、そこで「伝統」にのっとって大見得を切るかのようにテンポを落とすことなどせず、いともサラッとイン・テンポで通り過ぎていきますよ。
「ハイドン・ヴァリエーション」は、変ロ長調のテーマに続いて、変奏が変ロ長調と変ロ短調の2種類の調で現れるという音楽ですが、そこでもマンゼは短調の部分をことさら額面通りの深刻なものとは扱ってはいません。変わるのは「色」だけです。
ですから、予想通り「大学祝典序曲」は、ハイテンションの仕上がりになっていますよ。ファゴットの「狐狩りの歌」のテーマなどはノリノリですし、そのあとの「裏打ち」のリズムなど、ほとんど「スカ」のノリのどんちゃん騒ぎですからね。
こんな明るいブラームスも、たまにはいいのではないでしょうか。ブラームスのことを、「好きな人に一生告白できなかったウジウジしたやつ」という自虐的なイメージで縛り付けるのも「クラシック」にとっては大切なことなのでしょうが、その作品は本人の知らないところで自由に生きているというのも、また「クラシック」の一つの姿なのですから。

SACD Artwork © cpo
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by jurassic_oyaji | 2012-03-28 19:43 | オーケストラ | Comments(0)