おやぢの部屋2
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Dedicated to Piccolo
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Günter Voglmayr(Pic)
Stefan Mendl(Pf)
CAMERATA/CMCD-28248




毎年元日にウィーンから生中継されるウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートでは、誰が指揮をするのかという興味とともに、フルート・パートを誰が吹くのかも気になるところです。指揮者は前もって分かっていますが、木管楽器のメンバーが誰なのかなどということは、当日放送を見るまでは分からないのですからね。特にフルートはソロが沢山出てきますし、ウィンナ・ワルツではピッコロも大活躍しますから、4人から、時には6人ぐらいいる持ち味がそれぞれに異なるメンバーの中のだれがそのパートを担当するかによって、コンサート全体の雰囲気も変わってきますからね。
今年は、ワルター・アウアーとヴォルフガング・ブラインシュミットという、それぞれわりと最近正式の団員になったばかりの人たちがフルートとピッコロを吹いていました。顔の大きなブラインシュミットがちっこいピッコロを操っているのは、ちょっとユーモラスな図柄でしたね。ピッコロ・パートは、その他にギュンター・フェダセルと、ギュンター・フォーグルマイヤーが控えていて、オーバーアクションのフェダセル、知的なフォーグルマイヤーみたいなイメージで、それぞれの年に楽しませてくれていました。個人的には、カエルみたいな醜男のブラインシュミットよりは、イケメンのフォーグルマイヤーが見たかったな、と思いましたが。なんせ、お正月ですから。
ところが、それからちょっとしたら、ネットでそのフォーグルマイヤーの訃報が飛び込んできたではありませんか。一瞬信じられない思いでした。とてもそんな年齢ではなかったはずですから。実際は享年43歳、あまりにも早すぎる死でした。ウィーン・フィルのメンバーとしてだけではなく、ソロ・リサイタルのためにも何度も日本を訪れたことがあり、ファンも多かったはずです。
このCDは、2011年6月にソロで来日するタイミングに合わせてリリースするために、2010年の5月にウィーンで録音されたものです。しかし、その来日は病気のためキャンセルとなってしまいました。次の来日に備えて準備していたものが、はからずも追悼盤となってしまったのですね。同じレーベルには、フォーグルマイヤーの師であるヴォルフガング・シュルツとの多くの録音があったため、レパートリーが重ならないようにあえてピッコロだけのプログラムを用意したのだそうです。
しかし、その曲目は驚くべきものでした。ここでは、全ての曲が、元々フルートのために作られたものがピッコロで演奏されていたのです(厳密には1曲だけはピッコロのオリジナル)。例えば、「学習者」の定番、タファネルの「アンダンテ・パストラールとスケルツェッティーノ」などという、フルート以外の楽器で演奏することは考えられないようなものまで吹いてしまっているのですね。
しかし、実際に聴いてみると、そんな違和感はちっともありませんでした。ワン・ポイントのマイクを使って、かなり残響をたっぷり取り込んだ柔らかな響きの中から聴こえてきたピッコロは、フルートに負けないぐらいのたっぷりとした音色で存分に楽しめました。逆に、細かいパッセージの技巧的な部分などは、より華やかさが増して、その曲の別な魅力に触れることさえ出来てしまいます。ジョプリンのラグタイム、「オリジナル・ラグ」などは、元々ピアノの曲ですから、ピッコロではとことん陽気な音楽を楽しめますよ。
いや、そんな「派手」な面だけではなく、ピッコロでは難しいはずの「小さな音」を要求されるような場面でも、フォーグルマイヤーの技は冴えています。プロコフィエフの「束の間の幻影」などという、繊細極まりないピアニシモを要求される曲での確かなコントロールは絶品です。
この次はフルートでこんな繊細さを聴きたいと思っても、それはもはや叶わない願いになってしまいました。ご冥福をお祈りします。

CD Artwork © Camerata Tokyo Inc.
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by jurassic_oyaji | 2012-04-01 20:11 | フルート | Comments(2)
Commented by あこや at 2012-04-12 13:23 x
初めまして。
アマチュアのフルート&ピッコロ吹きです。
以前、ピッコロの情報をあれこれ探していたときに、
こちらのブログ(時任和夫さんのCD紹介)にたどり着きました。
即購入し、演奏に大満足しました。
今回も早速CDをamazonで「ポチっ♪」してしまいました。

的確で分かり易く詳細、そしてマイナーな分野までご紹介して
くださるレビュー。これからも楽しみにしています!
Commented by jurassic_oyaji at 2012-04-12 22:23
あこやさん、ご愛読ありがとうございます。
今後とも、よろしくお願いします。