おやぢの部屋2
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BACH/Missa in h-moll
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Drothee Mields, Hana Blaziková(Sop)
Damien Guillon(CT), Thomas Hobbs(Ten)
Peter Kooij(Bas)
Philippe Herreweghe/
Collegium Vocale Gent
PHI/LPH 004




フィリップ・ヘレヴェッヘと言えば、ながらくHARMONIA MUNDIのアーティストとしてお馴染みでした。なんでも、かれこれ30年来のおつきあいなのだそうです。ケンカばっかりしていたのでしょうね(それは「ド突き合い」)。まあ、それだけ長く務めればあとは独立して好きなようにしたいな、と思ったのかどうかは知りませんが、彼は2010年に自らのレーベル「PHI」を立ち上げます。ロゴマークで分かるように、ギリシャ文字の「ファイ」ですね。発音的にはフランス風に「フィ」というのだそうですが。「OUTHERE」という、「ZIG-ZAG」なども扱っているディストリビューターの下で、2010年3月に録音したマーラーの交響曲第4番を皮切りに、毎年4~5枚のペースで新譜をリリースする予定なのだとか。その4枚目のアイテムとなったのが、今回の「ロ短調」です。
ヘレヴェッヘの「ロ短調」は、もちろんHARMONIA MUNDI時代にも1996年に録音されたものがありましたし、その前にも1988年にはVIRGINに録音していますから、これが3回目なのでしょう。
VIRGIN盤は聴いたことがありませんが、HMでの一連のものに比べると、まず録音がより厚みのあるものになっていることに気づきます。録音を担当したのは「TRITONUS」、しかも、録音会場が、昔カラヤンとベルリン・フィルが愛用していたベルリンのイエス・キリスト教会ですから、確かに骨太の音に仕上がっているのも納得です。澄みきった残響も、心地よく感じられます。
さらにうれしいことに、このCDには日本の代理店によって、ブックレットの全文が日本語に訳されたものが、「おまけ」でついています。そのメインのライナーノーツを執筆しているのが、まさに「ロ短調」の世界的な権威であるクリストフ・ヴォルフであるのもうれしいこと、これだけの「濃い」最新情報を日本語で読めるだけでも価値があります。
ところが、この日本語訳にはきちんと合唱とオーケストラのメンバーが載っているのに、その元になった本来のブックレット(英・仏・独・蘭)には、どこを探してもそれが見当たらないのはどうしてなのでしょう。というか、日本の代理店は、このメンバー表をいったいどこから持ってきたのでしょうか。いずれにしても、すっかり知らない人ばかりになってしまったメンバーの中に、オーボエのマルセル・ポンセールの名前を見つけたり出来るのは、ありがたいことです。
演奏に関しては、合唱もオーケストラも、ますます磨きがかかった響きを届けてくれるようになっているのではないでしょうか。もともとヘレヴェッヘの作りだすものは、他のピリオド系の演奏家のような見かけだけのサプライズはほとんど感じられないものでしたが、ここにきてさらにまろやかさが増してきたような印象があります。なによりも、ソリストたちもそれぞれのパートに参加している合唱のピュアなサウンドは、曲の始まりから、穏やかな安らぎを与えてくれます。ただ、それは響きの中に身をゆだねるといった、かなり感覚的な魅力が勝っていることは否定できません。例えばブリュッヘンなどが見せつけてくれたような、思わずひれ伏したくなるほどの精神的な包容力のようなものまでを、この演奏に求めるのはお門違いのような気がします。
ですから、「Credo」の中にあるいくつかの合唱のための曲のように、場合によってはかなり深刻な表現を求めたくなるような局面でも、あえて「ないものねだり」はせずに、その淡白さの中にこそ平穏な日常性を見出さなければいけないのかもしれません。そうすれば、いかに「Benedictus」のテンポが速すぎたとしても、トーマス・ホッブズが表現を求め過ぎるあまりにそのテンポに乗れなくなってしまうようなことはなくなるのです。
そんな「さらっと系」ロ短調、もし、さらにクリアなSACDだったりしたら、もはやバッハとしての刺激すらもなくなっていたことでしょう。

CD Artwork © Outhere
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by jurassic_oyaji | 2012-04-09 21:32 | 合唱 | Comments(0)