おやぢの部屋2
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BACH/Johhannes-Passion
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Jan Kobow(Ev), Stephan MacLeod(Jes)
Matthew White(Alt)
Alexander Weimann/
Les Voix Baroques
Arion Orchestre Baroque
ATMA/ACD2 2611




先日のハジェット盤でも歌っていたカナダの男声アルト、マシュー・ホワイトが中心になったソリストのアンサンブル「レ・ヴォワ・バロック」と、ケベック州唯一のピリオド楽器のオーケストラ「アリオン・オルケストル・バロック」の共演による「ヨハネ」です。オーケストラの弦楽器は複数、合唱は1パート3人という、今では「標準的」なサイズで演奏されています。アリアのソロも、合唱の中の人が交代で担当するというのも、「標準的」。
もちろん、新バッハ全集の楽譜を使うというのも至極「標準的」なアプローチなのでしょう。なぜかライナーの詳細なタイトルの後に「1724年4月7日ライプツィヒ」などと、初演の日と場所が書いてあったとしても、それをもってこの演奏が初演の時と同じ楽譜(つまり「第1稿」)で演奏されていると思ったりしてはいけません。そんな誤解を与えないように、紛らわしいことは書かないでほしいものです。というか、この曲に関してはそのような誤解を招いてしまうような表記があまりに多いものですから、こちらの一覧表を、そんなものも含めてリニューアルしてみましたよ。
指揮者でオルガンも弾いているヴァイマンがこの曲に目指したプランは、まるでガーディナー盤のような攻撃的なもののように、まず思えました。第1曲目はまるで追い立てられるようなテンポで、いかにもこれから恐ろしいことが行われるのだ、みたいな雰囲気を盛り上げています。そんな情景の立役者が、異常に大きな音で録音されているチェンバロと、いかにもソリストが集まったという、個人個人の主張がとても強烈な合唱でした。決してパートとしてまとまろうとはしていない、はっきり言って「汚い」合唱なのですが、そこから生まれるインパクトはすごいものがあります。コラールも、やはり表現重視の密度の高さ、というより、何か常にとげとげしさが感じられてしまうのがちょっときつく感じられてしまいます。
エヴァンゲリストのコボウも、かなりのハイテンション、突き抜けるような高音で、やはりドラマティックに迫ります。この人だけ合唱に加わっていないのも、これだけの「重労働」を担当しているのでは納得です。土の中から掘り出すのは、やはり大変?(それは「ゴボウ」)
ライナーには誰がどのアリアをうたっているのかきちんと書いてありますから、それぞれのソロを聴くと、同じパートの中でかなり異なったキャラクターがいることがよくわかります。これでは「合唱」としてまとまることはかなり難しいでしょうね。テノールでは、13番を歌っているジェレミー・バッドはかなり張りのある声ですが、20番を歌っているローレンス・ウィルフォードはもっと軽くてソフトな声といった具合、確かにそれぞれのアリアのキャラクターにはピッタリな声なのですがね。難しいところです。
アルトのホワイトは最初のアリア、7番を歌っていますが、発音がとってもユニーク、例えば「von」だったら「フォンヌ」みたいに単語の語尾をやたらと強調しているので、とっても不自然に聴こえます。もう一人、30番の方を歌っているのは女声のメグ・ブレイグルですが、このアリアを歌う人にありがちな深刻さがまるでなくサッパリしているのには好感が持てます。それでいて、表情が豊かなのですからね。
こんな個性的な集団が、後半になるにしたがって次第に声が溶け合って、「合唱」らしくなっていくのですからおもしろいものです。27番のレシタティーヴォの中に出てくるポリフォニックな合唱などは、全く隙のない完璧さでびっくりさせられてしまいました。
終わってみれば、とても引き締まった演奏に、息つく暇もなかったという印象が残ります。最初からそれを狙ったのだとすれば、ちょっとすごいことです。

CD Artwork © ATMA Classique
by jurassic_oyaji | 2012-04-27 20:41 | 合唱 | Comments(0)