おやぢの部屋2
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WHITACRE/Water Night
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Hilla Plitmann(Sop)
Julian Lloyd Webber(Vc)
Eric Whitacre/
Eric Whitacre Singers
London Symohony Orchestra
DECCA/B0016636-02




前作Light & Goldが、今年のグラミー賞で「Best Choral Performance Award」を受賞したエリック・ウィテカーの、DECCAでの2枚目のアルバムです。今回もやはりイギリスの合唱団のピックアップ・メンバーからなる「エリック・ウィテカー・シンガーズ」が、曲に応じて28人編成と36人編成で控えていて、ほとんどが世界初録音となる新作を歌っています。それだけではなく、このアルバムではウィテカーの「合唱曲」以外のオーケストラのための作品も聴くことができます。確かに今となっては合唱曲作曲家としてのイメージが定着していますが、彼は吹奏楽の分野でもかなり知られている人なのですからね。
そんな、初めて聴くフル編成のオーケストラのための作品は「Equus」です。ラテン語で「馬」という意味のタイトルを持つこの曲は、そもそもは吹奏楽のために作られたものを、2011年にこの編成に書き直したものです。そんなタイトル通り、まるで疾走する馬のようなパルスに乗って音楽は進んでいきます。これは、まさにスティーヴ・ライヒの「ミニマル」そのものではありませんか。今ではライヒ自身はもう用いなくなったかなり昔のシンプルなスタイルを、まさか今の時代に聴けるとは。ただ、そんなパルスの中で登場するフレーズは、確かにライヒとは違ったエンタテインメントの要素を強く持っているものでした。そんな中で、いきなり渚ゆう子の「京都の恋」が聴こえてきたのにはびっくりしましたね。確かにこれは「ザ・ベンチャーズ」のメンバー、ドン・ウィルソンが作った曲ですから、言ってみれば「アメリカの作曲家へのオマージュ」なのかもしれませんね。金管は派手に鳴り響き、いとも爽快に仕上がった作品です。
もう一つのインスト物は、チェロのジュリアン・ロイド・ウェッバーをフィーチャーした、チェロと弦楽合奏のための「The River Cam」です。これはガラリとイメージが変わって、ほとんどアルヴォ・ペルトの世界をそのまま再現したような、まさに「癒し」にどっぷり浸たれるような音楽ですね。
そして、前作では歌詞だけを提供していたソプラノ歌手のウィテカー夫人、ヒラ・プリットマンのソロも聴くことができます。それは「Goodnight Moon」という、彼らが息子を寝かしつけるときに読んであげた絵本をテキストにした、とてもかわいらしい曲です。それを歌う、確かに胸のあたりがプリッとしているプリットマンは、とてもピュアな声で和ませてくれます。どことなくサラ・ブライトマンにも似たイノセントな声は、もしかしたら、サラのパートナーであったアンドリューと同じく、エリックの作曲のモチベーションとなっているのかもしれませんね。
超売れっ子のウィテカーですから、様々な団体からの委嘱はひきも切らないのでしょう。ここで初録音となったのはそんな新作のごく一部なのでしょうが、「Alleluja」にしても「Oculi Omnium」にしても「Sleep My Child」にしても、完璧な合唱団の演奏もあって全く期待を裏切られることのない、まさに円熟の極みを見せてくれています。包み込むようなハーモニーは自然に心の中に沁みてきますし、録音会場いっぱいに響き渡るフル・ヴォイスは、何よりの爽快感を与えてくれます。しかし、それらが何か予定調和に陥っているようなところが、少し気になってしまいます。初期の作品にはみられたはずの刺激的な要素が、少し希薄になっているのが心配です。
When David Heard」という、「前世紀」に作られた曲もここでは歌われています。それを、2005年に録音されたレイトンの演奏と比べてみたら、なんだかずいぶん「丸く」感じられてしまいました。もしかしたら、作曲家自身のスタンスが、年を経て微妙に変わってきているのかもしれません。
そういえば、このCDの録音は、耳あたりはいいのですが、ちょっと何かが欠けていて薄っぺらな感じがします。あ、タイトル曲は、合唱曲ではなく弦楽合奏バージョンです。念のため。

CD Artwork © Decca, a division of Universal Music Operations, Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2012-04-29 20:49 | 合唱 | Comments(0)