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MAHLER/Sinfonie Nr.1, WEBERN/Im Sommerwind
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François-Xavier Roth/
SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg
HÄNSSLER/CD 93.294




かつての「現代音楽の雄」、南西ドイツ放送交響楽団は、今ではこんな長ったらしい名前に変わっていますが、ハンス・ロスバウトから最近のミヒャエル・ギーレン、シルヴァン・カンブルランまで綿々と続く「現代音楽に強い」首席指揮者のもとで、その名に恥じない活躍を続けています。
カンブルランの後を受けて、2011年から首席指揮者に就任したのは、なんとフランソワ=グザビエ・ロト、あの「レ・シエクル」を作った、「現代」よりは「過去」の音楽に強そうな指揮者でした。マグロも、赤身よりは脂身ですね(それは「トロ」)。このチームはすでに2月に日本でもコンサートを行っています。その時のプログラムにもあったウェーベルンの「夏風の中で」をカップリングにしたマーラーの「交響曲第1番」です。日本公演では、やはりマーラーの「交響曲第5番」が取り上げられていましたね。
その演奏を聴きに行ったわけではないのではっきりしたことはわかりませんが、ピリオド楽器の「レ・シエクル」とは異なり、モダン・オーケストラの場合は、例えば同じレーベルのノリントンのように不自然なノン・ビブラートを強要するようなことはしていないようです。音を聴く限り、弦楽器はちょっときつい響きではありますが、ビブラート自体はちゃんとかかっているようですね。それよりも、ノリントンでさえ「一人」で演奏させていた第3楽章(「花の章」が入っているノリントンの場合は第4楽章)冒頭のコントラバス・ソロを、最新の楽譜通りにトゥッティで弾かせている方が気になります。ただ、これはちょっと聴いただけでは「一人」に聴こえてしまうほどのピアニシモですから、全員ではないのかもしれませんね。
そんなマーラーは、なんとも思いっきりの良い演奏ぶりに、圧倒されます。録音もCDにしておくのはもったいないほどの、芯のある艶やかな響きが心地よく、オーケストラのサウンドを楽しむにはもってこいの仕上がりになっています。これで切れ味よくグイグイ迫って来られたら、実際のライブだったらさぞや盛り上がることでしょう。
そんな風に、にぎやかに「攻め」の姿勢で臨んでいるところはとことんかっこいいのですが、しばらく聴いていると、こんな威勢の良い音楽はなんだかマーラーらしくないような思いに駆られてしまいます。常々マーラーほど屈折した感情の持ち主はないことを様々な場所で体験していますから、一ひねりしてほしいフレーズを、何のためらいもなくいともストレートに扱われてしまうと、「ちょっと違う」と思ってしまうのですね。
ですから、ある意味「守り」とも言えるゆったりとした部分は、さらに味気なく聴こえてしまいます。例えば、第3楽章の真ん中にある「さすらう若人の歌」の第4曲目「Die zwei blauen Augen」の後半をそのまま移調した部分などは、きっちりと「安らぎ」を演出してほしいところなのですが、こんな、ほとんど感情を込めていないのではないかと思えるほど素っ気ない演奏をされてしまうと、この曲に本当に必要なものが何か抜けてしまっているようにしか思えなくなってしまいます。この部分の最後を締めくくるフルートを、これほど雑に切ってしまう神経が理解できません。
その点、ウェーベルンには作品番号すらも付けてもらえなかった、彼が「12音」に手を染める前に作られた「夏風の中で」は、曲に込められた情感がマーラーほどは屈折していない分、素直に楽しめます。
ほんと、これはなんとチャーミングな曲なのでしょう。まさに後期ロマン派の豊穣がたっぷり詰まった、オーケストラの魅力が存分に味わえる秀作です。こんな素直な感情の発露を音楽にしていた作曲家が、なぜあんなにもつまらない曲を書くようになってしまったのか、ロトは、そんなことを問いかけているのかもしれません。おそらく、この指揮者は、あまり面倒くさいことは好きではないのかも。

CD Artwork © SWR Media Services GmbH
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by jurassic_oyaji | 2012-05-01 23:03 | オーケストラ | Comments(0)