おやぢの部屋2
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PENDERECKI/Music for Strings
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Artur Pachlewski(Cl)
jean-Louis Capezzali(Ob)
Antoni Wit/
Warsaw Philharmonic Chamber Orchestra
NAXOS/8.572212



手元には、NAXOSの最新のカタログがあります。ただし、これは日本の代理店が毎年出していた日本語版ではありません。前はショップに山積みになっていたのに最近は見かけないな、と思っていたら、もはやこのような「紙」のカタログは制作しないことになったようですね。これからは何でもかんでも電子化の時代、と言わんばかりに、早々と「紙」には見切りをつけて、すでにWeb版カタログに完全移行してしまっていたのですよ。ですから、これはインターナショナル版のカタログの「2011年版」なのですが、おそらく時代の流れでこれが最後の「紙」カタログになってしまうのではないでしょうか。ある意味、貴重品ですね。
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このレーベルからリリースされてきたアントニ・ヴィットが指揮をしたペンデレツキの一連の録音も、もちろんこのカタログには載っています。しかし、そこで「最新リリース」とされているのは、2010年にリリースされた「クレド」なのですから、もちろん今回のアルバムが載っているはずはありません。これはもはや「紙」カタログには決して印刷されることがないアイテムだと思うと、なんだか切なくなってはきませんか?
このカタログでも、そしてWebのカタログでも、演奏者の名前は書いてありますが、録音スタッフまではわかりません。Webの場合はなにやらストリーミング・サイトにリンクされていて、有料会員になればブックレットを読ませてやるという高飛車な態度で待ち構えていますが、そんなあくどい商売に騙される人はいませんから、それは現物のCDを手にして初めてわかることです。それによると、このレーベルのペンデレツキ・シリーズは、実際はポーランドの「CD Accord」が制作しているようですね。どうりで、熱の入れ具合がハンパではないわけです。
今回はペンデレツキの弦楽合奏のための作品を集めたアルバムです。彼の「出世作」である「ヒロシマ」がやはり弦楽合奏だったにもかかわらず、このジャンルの作品の影が薄いと感じられるのは、なぜでしょう。いつものように、絶妙な曲目の選択によって、ほとんど初めて聴く作品の中から、この作曲家のまた別の姿が発見できるのですから、このシリーズは外すわけにはいきません。
なんと言っても、一番笑えるのは、彼が「前衛」作曲家だった時代、1963年に作られた「古い様式による3つの小品」でしょう。もともとは映画のサントラとして作られた曲なのだそうですが、これはもろバロック、3曲目あたりはまさにモーツァルト然としたロココ趣味の、とてもよくできたパロディになっています。あのペンデレツキがこんなものを、と思うと、これは、何か微笑ましい感じのする体験です。でも、例えば日本の作曲家でも、湯浅譲二は「前衛作曲家」であると同時に、本田路津子のヒット曲「耳をすましてごらん」や「♪インディアンが通る アッホイアッホイアッホイホイ」みたいな童謡も作っていましたし、同様に武満徹だって、「フォークソング」の名曲「死んだ男の残したものは」の作曲者なのですから、こんな「二足のわらじ」はこの時代の作曲家にとっては当たり前の姿だったに違いありません。
ただ、こんなものを聴かされた後に、「前衛時代」の作とされる「24の弦楽器のためのインテルメッツォ」や、「オーボエと弦楽オーケストラのためのカプリッチョ」を聴いても、いとも当たり前の曲に感じられてしまうのは困ったものです。それよりも困る、というか嬉しいのは、この中では最も新しい、いずれもオリジナルは室内楽だったものを弦楽合奏のために作り直した2つの「シンフォニエッタ」が、見事にさっきの「3つの小品」とリンクしてしまうことです。これらの書法の、なんと自信に満ちていることでしょう。
もしかしたら、ペンデレツキは彼の生涯で「前衛作曲家」だったことなんて、一度もなかったのではないでしょうか。

CD Artwork © Naxos Rights International Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2012-05-03 21:10 | 現代音楽 | Comments(0)