おやぢの部屋2
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Bomtempo/Requiem
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Angela Maria Blasi(Sop), Liliana Bizineche-Eisinger(MS)
Reinaldo Macias(Ten), Michel Brodard(Bas)
Michel Corboz/
Gulbenkian Choir and Orchestra
VIRGIN/6 02864 2




ホアオ・ドミンゴス・ボンテンポなどという、仙台藩主みたいな名前(それは「梵天丸」)の作曲家なんて、「レクイエム」を作っていなければまず一生関わることはなかったことでしょう。1775年に生まれたこのポルトガルの作曲家の「レクイエム」は、物の本には1994年にコルボによって録音されたものがあると記されていますが、そんなもはや廃盤扱いになった音源が、突然スッペの「レクイエム」との抱き合わせで、新装発売となりました。スッペは、すでに聴いていたので要らないのですが、ボンテンポはこれを逃したらもう出ることはなさそうなので、入手しておかなければ。
ポンテンポという人は、ポルトガルの宮廷楽師だったイタリア人を父親として、ポルトガルに生まれましたが、なぜかイタリアで音楽の勉強をすることはなく、パリでピアニストとして活躍、その間に多くのピアノ協奏曲などを作曲しました。この「レクイエム」も、パリ時代、1818年の作品です。彼は後にポルトガルへもどり、教育者としても活躍します。
ポルトガルの首都リスボンの団体、グルベンキアン合唱団や管弦楽団と長年関係を持っているコルボだからこそ、あまり知られていないポルトガルの作曲家を取り上げたのだな、と思っていたら、実は彼より先、1980年にすでにハインツ・レーグナーがベルリン放送交響楽団などの「東側」のアーティストと録音していたのですね。思っているより広範な支持を、この曲は受けていたのかもしれません。
ただ、そのレーグナー盤は現在では入手は不可能、しかしIntroit」の一部「Lacrimosa」だけが東独系の得体のしれないレーベルのコンピレーションの中に入っていたので、まずは「予習」の意味でそれを聴いてみます。なかなか表情豊かなオーケストラに乗って、なんだかモーツァルトの同名曲にどことなく似た合唱が聴こえてきたのはご愛嬌。ボンテンポの場合は間違いなくモーツァルトの作品を聴いていたはずですから、何かしらの影響は受けていたことがうかがえます。
そして、コルボ盤です。さっきのレーグナー盤のようにいきなり合唱が始まるのではなく、何やら神秘的な超ピアニシモの低弦によってちょっとパッサカリア風のテーマが聴こえてきたのにはびっくりしました。ただ、この「イントロ」は別に変奏されることはなく、そのまま合唱が、まさに「古典派」そのもののメロディを持った歌を歌い始めたので一安心です。繰り返して聴いてみると、やはりなんだかモーツァルトの影が強く付きまとっているような思いは確信と変わります。特にヴァイオリンの伴奏のフレーズがとてもよく似た情感を与えてくれます。
さっきの「Lacrimosa」は、ここでは「Dies ira」全体が一つのトラックとなっていて、21分半の間、途中の曲を頭出しすることは出来ないようになっていました。やはりどこかで聴いたことがあるような感じが常につきまとう部分が現れるうちに、やっとその曲の前奏が始まります。しかし、その前奏の弦楽器は、レーグナー盤のような起伏に富むものではなく、何とも薄っぺらなのですね。さらに驚いたことには、レーグナー盤では合唱だったところが、ソリストによって歌われているではありませんか。これで、この曲のイメージがガラリと変わってしまいました。コルボの演奏は何とも締まりのないユルいものになっているのですね。
ずっと付きまとっていた「デジャヴ」感は、「Domine Jesu Christe」で最高潮に達します。これはモーツァルトそのものですよね。というよりは、この時代の様式から予想される展開を決して裏切らない、落ち着くべきところに落ち着く音楽が続くという感じですね。
この「レクイエム」からは、特別な緊張感や、悲哀の情などはほとんど感じることはできません。ただ、そのような印象はもしかしたらコルボたちの演奏がもたらしているのでは、という気がしてなりません。

CD Artwork © EMI Records Ltd/Virgin Classics
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by jurassic_oyaji | 2012-05-09 19:47 | 合唱 | Comments(0)