おやぢの部屋2
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Kisses on the Bottom
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Paul McCartney
HEAR MUSIC/HRM-33369-02




かなり昔のことで記憶が曖昧ですが、さる高名なクラシックの作曲家が、「ビートルズのような音楽は、20代の若者にしか作れない」というようなことを言っていました。ああいう音楽は年を取ったらやるものではない、というような意味が、その語感の中にあって、いかにもなロック蔑視だ、と、その時は思ったものです。
とは言っても、やはりその人が言うとおり、いい大人、というか、「初老」のジジイがいい年こいて大声を張り上げて「ロックンロールだぜ!」と盛り上がっているのがなんだかみっともなく見えてしまうのも、ひとつの真実ではないでしょうか。ロックに限らず賞味期間が存在する音楽というものは確かにあるようですね。かつてのアイドルが、還暦を迎えようというのに昔の持ち歌ばかりを歌っているというのは、間違いなく醜いものです。
そんな、かつては「ロッカー」であったポール・マッカートニーが、まさかと思われた「ジャズ」のアルバムを出したというのも、やはり年を重ねていった中での変化によるものなのでしょう。大げさな拒否反応を示す人もいたようですが、そんなに目くじらを立てずに、新しいポールを受け入れようではありませんか。なんたって、もうじき「古希」を迎えるのですからね。やりたいことをやらせてあげたらいいのではないでしょうか。
ここでのポールは「ボーカル」に専念しています。楽器は、すべて信頼のおけるジャズ・ミュージシャンに任せようという姿勢なのでしょう。もちろん、プロデュースやアレンジにも、クレジット上は一切関わっていないようですね。ただ、彼のクレジットが「Vocals」と、複数形になっているのが要注意です。
最初はリズム・セクションだけのバックで「I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself
A Letter
」です。イントロのウッド・ベースのピッキングや、ブラシを使ったドラムスなどは、まさに「小粋なジャズ」という趣、それと、口やかましいジャズ・フリークにも通用しそうなとびきりの録音に、まず耳が反応してしまいます。このアルバムの音源の24/96FLACファイルがオフィシャル・サイトからダウンロード出来るそうですが、そんな「ハイレゾ」にも対応できるソースであることも納得できます。CDで聴くとボーカルがいまいちドライなのが気になるのですが、せめてSACDでも出してほしかったものです。
ここでは、コーラスがとても気持ち良くハモっています。それが「Vocals」ということだったのですね。基本的にここでのポールの歌い方は力を抜いたハスキーなもの、そこに彼自身のファルセット気味のコーラスが入ると、なんとも上品なハーモニーが生まれます。
次の「Home(When Shadows Fall)」になると、今度はなんとも渋いストリングスが入ってきます。演奏しているのはロンドン交響楽団。ポールはアメリカで録音していますが、このストリングスはロンドンのアビーロード・スタジオでのセッションです。もちろんスタジオ1でしょうが、ポールがさんざん使ったスタジオ2と同じ建物というのも、なにかの因縁でしょうか。実は、このアルバムには、スタジオ・ミュージシャンによる別のストリングスが入ったものもあります。それはアメリカで録音されているのですが、ロンドン響と比べると、弦の響きの深みが全く違いますね。
スタンダード・ナンバーに混じって、ポールの新作も2曲披露されます。「My Valentine」は、まさにマッカートニー節満載のキャッチーな、それでいてオトナの音楽で、見事に「ジャズ」になっています。「Only Our Hearts」は、ちょっとボーカルの印象が乏しい気がしますが、それはゲストのスティービー・ワンダーのハーモニカが、あまりにも存在感があり過ぎたせいなのかもしれません。
それが最後だと思っていたら、そのあとでジャケットにはなんの表示もないボーナストラックが2曲も入っていました。ちょっと得した気分。全くシャウトしていないポールも、なかなかいいものです。

CD Artwork © MPL Communications Inc.
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by jurassic_oyaji | 2012-05-11 23:13 | ポップス | Comments(0)