おやぢの部屋2
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MOZART/Apollo et Hyacinthus
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Andrew Kennedy(Oebalus), Klara Ek(Melia)
Sophie Bevan(Hyacinthus), Lawrecne Zazzo(Apollo)
Christopher Ainslie(Zephyrus)
Ian Page/
The Orchestra of Classical Opera
LINN/CKD 398(hybrid SACD)




スコットランドにある「Linn Products」と言えば、昔から超高級オーディオ・メーカーとしてマニアの間では知られていました。とても手が出そうもない価格の製品を見ながら、「いつかはLinnを」と自虐的に呟いている人はたくさんいることでしょう。最近では、パソコンやインターネットを駆使した「ネット・オーディオ」という新しい分野でも、このメーカーは指導的な立場に立って、次々と魅力的な製品を出しています。彼らが提唱している「DS」(ゲーム機じゃないですよ。「Digital Stream」の略語です)という概念は、いずれはオーディオ界の主流となっていくのでしょうか。
このメーカーの強みは、「Linn Records」というソフト部門を持っていることでしょう。ここで録音された音源は、まさに最高のオーディオ・システムで再生されることを前提としているのですから、その音が素晴らしいのは当たり前の話です。同じようなソフトとハードを両方とも手がけているメーカーは、例えばPHILIPSとかSONYのようなところがありましたが、その両者が手掛けたSACDは、もうこのレーベルから発売されることはありません。その点、Linnの場合は、大メーカーが多くのしがらみの中で必ずしもなしえなかった、「最高」のものを目指して、妥協のないアプローチで臨んでいけるのでしょう。
ネット・オーディオに関しては、まだ何とも言えませんが、パッケージ・オーディオではほとんどすべてのアイテムをSACDで出してくれているのが、そんな「最高」を目指す証でしょうか。今回は、このレーベルにとって2枚目となるオペラ、モーツァルトの「アポロとヒュアキントス」です。
M22」に従えば、モーツァルトにとっては2番目のオペラとなるこの作品は、彼が11歳の時の1767年に、ザルツブルク大学付属のギムナジウムで上演するために委嘱されたものです。この学校では、教育のためにラテン語による演劇やオペラを上演する伝統がありました。この作品の台本は、そこの教師で司祭だったルフィヌス・ヴィドルによって書かれています。ヴィドルは、ギリシャ神話に題材をとって、アポロ、ヒュアキントス、そしてゼフィルスの「三角関係」を描こうとしたのですが、オリジナルのままではあまりにも露骨なホモセクシャルの内容になってしまうので、「教育」にはふさわしくないと、新たに女性のキャラを加え、あくまでストレートの世界であるように改変しています。
その、最もノーマルなキャラのメリア姫を歌っているエクが、とても伸びのある可憐な声で楽しませてくれます。それに対して、3人の「神」は、本来は男性の役なのでしょうが指定は女声パート、アポロはソプラノ、あとの二人はカウンターテノールで歌われています。一番の「悪者」であるゼフィルス役のエインズリーが、とても個性的な声で見事な表現力を見せてくれています。
これはもちろんセッション録音ですが、キャストはこのために集められたものではありません。彼らはすでに1997年から「クラシカル・オペラ」という、指揮者のペイジを中心としたカンパニーを結成していて、様々なオペラハウス(その中には、コヴェント・ガーデンのような高ランクのところも含まれます)で、モーツァルトとその同時代の作曲家たちの多くのオペラを上演してきているのですね。もうすでに完成された形になったものが、LINNのスタッフによって録音されるのですから、悪いものが出来上がるはずがありません。さらに、ここでは録音ならではの工夫も見られます。オペラの中には「雷」や「風」が登場するのですが、それは、まるであのジョン・カルショーのような、効果音にもきちんと出演者としての魂を込めるのだ、といったとした意気込みがビンビン感じられるような、リアリティあふれるものでした。
これからも、彼らの録音からは目が離せません。

SACD Artwork © Linn Records
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by jurassic_oyaji | 2012-05-15 20:33 | オペラ | Comments(0)