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BRUCKNER/Symphonie Nr.5
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Christian Thielemann/
Münchner Philharmoniker
DG/477 5377
(輸入盤)
ユニバーサル・ミュージック
/UCCG-1237(国内盤)


現在のミュンヘン・フィルの本拠地は、1985年に作られた「ガスタイク・ホール」。なんか、すごい匂いがしそうなところですが(それは「ガスタンク」)、2400人収容という、なかなか立派なコンサートホールです(もちろん、オルガンも付いています)。かつて、あのチェリビダッケがこのホールでこのオーケストラを指揮した映像が有名ですから、この、木材を多用した内部を持つホールは私たちには馴染みのあるものです。しかし、このCDのライナーにも写真が載っているのですが、いつも疑問に感じるのは、このホールが正確にはどういう形をしているのか、ということです。特にステージの形が、どんなアングルから見ても左右対称には見えません。レンズによるゆがみとも思ったのですが、どうもそうではなさそう、どこかにここの平面図でも掲載されてはいないでしょうか。
そのガスタイクで、2004年の10月に行われたのが、ティーレマンのミュンヘン・フィル音楽総監督就任記念のコンサートです。このCDは、その時に演奏されたもののライブ録音(もちろん、何回かの本番とリハーサルが適宜編集されています)です。
私が聴いたのは国内盤、そのコシマキには「このCDは長時間収録(8234秒)のため、一部のプレーヤーでは再生できないことがあります」という表示がありました。これには、3つの意味で驚かされました。まず、CDの収録時間がここまで伸びたのかという驚き、同時に、もしかしたら再生できないかもしれないような商品を堂々と販売しているメーカーの厚かましさに対する驚き、そして、普通だったらCD1枚に楽々収まるはずのブルックナーの5番にこれだけの時間を要しているという驚きです。前々任者のチェリビダッケが同じオケを振った録音が88分という突出して長い演奏時間を誇っていますが、一般的には70分台がまず妥当と思われるテンポなのですから。
しかし、スピーカーの左奥からとてつもないピアニシモのコントラバスのピチカートが聞こえてきたとき、そこには、ミュンヘン・フィルのメンバーが、この新しいシェフの元で、チェリビダッケあたりからたたき込まれたブルックナーについての美学を、思う存分開花させてくれるのではないかという予感のようなものを感じることが出来ました。それは、第1楽章の最初のテーマの広々とした歌い方によって、さらに現実のものとなります。第2楽章の不思議なリズムの重なり合いも、全く自然のたたずまいとして聴くことが出来ましたし、スケルツォでの生気あふれるアッチェレランドにも、作為的なものは全く感じられません。そして、長大なフィナーレでは、幾分冗長だと思えるようなまだ推敲の手が施されていないのでは、と思える場所をきちんと受け止められるだけの余裕すら感じることが出来ます。だからこそ、一番最後の殆ど「オマケ」に近いフレーズにさえ、確かな存在感を感じることも出来たのでしょう。そして、ここでは演奏時間から想像されるような「遅さ」は、全く感じられることはありませんでした。それどころか、このテンポだったからこそ、このガスタイクに輝かしく重厚な音を響き渡らせることが見事に成功したのでは、と思えるほど、それは納得のいくテンポだったのです。
一人一人の奏者の息づかいまではっきり受け取ることが出来るほどの優秀な録音によって、この、指揮者とオーケストラが幸運な船出を成し遂げた場の、いかにもブルックナーにふさわしい密度の高い音響空間は、このCDの中に確かに永遠の記録として残りました。
by jurassic_oyaji | 2005-05-16 19:47 | オーケストラ | Comments(2)
Commented by dognorah at 2005-05-17 07:45
CD-Rのメディアは90分まで録音できるものが販売されています。私はかなりの数それを使って音楽CDを作りましたが、手持ちのCDプレーヤーはすべて問題なく再生しました。
Commented by hummel_hummel at 2005-05-17 23:49
こんにちは。ガスタイクではなくバーデンバーデンではありますが、ティーレマン&ミュンヘンフェイルでのブル5を聴いてきたので、こちらの記事を嬉しく読みました。記事をTBさせていただきます。