おやぢの部屋2
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SHAKHIDI/Orchestral Works
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Igor Fedorov(Cl)
Valery Gergiev/
London Symphony Orchestra
Mariinsky Theatre Symphony Orchestra
MELODIYA/MEL CD 10 02007




かつては「ソ連」の国営企業だった「MELODIYA」というレーベルは、一時はBMGなどの西側の企業からCDがリリースされていたことなどもありましたが、現在のロシアの元ではどのような形態になっているのでしょう。こんな風に、いきなりゲルギエフと、彼がシェフを務めるオーケストラとの録音が出たりすると、ちょっと戸惑ってしまいます。というのも、ここで登場しているロンドン交響楽団にしても、マリインスキー劇場交響楽団にしても、しっかり独自レーベルを持っていて、今まではゲルギエフとの録音はそこから一本化されてリリースされていましたからね。しかも、SACDで。
実際は、この2つのオーケストラのレーベルの録音を担当しているのは、どちらもイギリスの「Classic Sound」で、エンジニアにはニール・ハッチンソンやジョナサン・ストークスが名を連ねています。このMELODIYA盤では、LSOについては、やはりこの二人のクレジットがありますから、原盤は「LSO LIVE」であることがうかがえますが、マリインスキーの分は聞いたこともないロシア人のエンジニアの名前がありますので、ちょっと正体不明。
おそらく、ここで演奏されている作品が旧ソ連、タジキスタンの作曲家のものなのが、こんなわけのわからないCDが作られた最大の要因なのかもしれません。その、トリブホン・シャヒディという1946年生まれの作曲家のことも、ここで演奏されているクラリネット協奏曲や、様々の交響詩とバレエ音楽のことも、MELODIYAからこんなCDが出ない限り、一生知ることはなかったことでしょう。
何でも、このシャヒディという方は、あのハチャトゥリアンの教えを受けた人なのだそうです。日本の代理店が作った「帯」では、「21世紀のハチャトゥリアン」という惹句が踊っていましたね。まあ、全然聴いたことのない作曲家を紹介するのですから、このぐらい具体的なイメージを抱かせるようなコピーの方が良いにはきまっていますが、こういうものを鵜呑みにするのは極めて危険。
そして、極めて当たり前のことですが、いくら師弟とはいえ、個々の作曲家の個性や芸風は違って当たり前なのですから、この作曲家に「ハチャトゥリアン」の作風を期待して聴くのも、危険なことです。確かに、打楽器を派手に使ったり、リズミカルなフレーズを多用したりと、似ているところがないわけでもありませんが、これは全くの別物です。その最も重要な相違点は、この作曲家にはハチャトゥリアンのようなグローバルな意味で心の琴線に触れるようなものがない、ということです。おそらく、彼の場合、タジキスタン近辺の人たちには必ず通用するような「なにか」を、その音楽に込めているのでしょうが、それがあいにく、ほとんどの日本人に対しては「ハチャメチャ」にしか聴こえないのではないでしょうか。それはそれで、作曲家としての資質が問われるものではありません。世界中のどこででも「美しい」と感じてもらえるような作品を書くことは、決して作曲家にとって必要なことではないのですから。
特に、前半で演奏しているロンドン交響楽団が、そんな音楽に対して及び腰のように思えて、ちょっといとおしくなってしまいます。管楽器奏者たちは、なんとか自分たちの「西洋音楽」の中に彼の音楽を馴染ませようと努力しているのでしょうが、そこにはなかなか踏み込んでいけないもどかしさが感じられないでしょうか。
ですから、後半のロシアのオーケストラでは、そんな「迷い」が全くない分、われわれ東洋人にとってはより入り難い世界が広がります。クラリネット協奏曲などは、正直意図するところが全く理解できないほどです。そんな中で、最後に聴こえてくる「マーチ」だけは、なにやら「ハリスの旋風」のようなテーマが出てきて、一瞬の安堵感が味わえます。しかし、その「ハリス」のいびつさを見るにつけ、彼我の感覚の違いの大きさに気づかないわけにはいかないのです。

CD Artwork © Empire Of Music
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by jurassic_oyaji | 2012-06-04 20:06 | 現代音楽 | Comments(0)