おやぢの部屋2
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BRUCKNER/Symphonies 8 & 9
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Carl Schuricht/
Wiener Philharmoniker
EMI/955984 2(hybrid SACD)




最近、ブルックナーの交響曲第8番、中でも「ハース版」に深い関心を持っているものですから、何か新しく発売されたものはないかと物色していたら、例のEMIの一連のSACDシリーズの中にシューリヒトのものがありました。これだったらまぎれもない「新譜」ですから、堂々と扱えます。もちろん、買ったのは1枚3000円もする国内盤ではなく、「9番」との抱き合わせですが、それでも1500円ぐらいで買えてしまう輸入盤です。
ただ、こちらの、大変権威のあるブルックナーのサイトでは、この録音は確かに「ハース版」の中に入っているのですが、SACDには「ノヴァーク版」と書いてあります。いったいどちらが正しいのでしょう。
そんなことは、実際に聴いてみればすぐわかります。この2つの版の間の相違点は、例えば「4番」でのオーケストレーションみたいなチマチマしたものではなく(それもありますが)、小節数そのものなのですから実にはっきりしています。スコアさえあれば、これは、まぎれもない「ノヴァーク版」であることがわかってしまいます。常々このサイトのデータはかなりいい加減なような気がしていましたが、また一つ不信材料が増えてしまいました。しかし、シューリヒトはこのEMIへの録音の前に、1954年にはシュトゥットガルト放送交響楽団との録音を残しているのですが(HÄNSSLER/CD93.148)、それはハース版で演奏しています。ノヴァーク版が出版されたのが1955年ですから、これは当然のこと、ですから、この1963年の録音もハース版だと決めつけてしまったのかもしれませんね。聴きもしないで。そういう「思い込み」は、できれば慎みたいもの、人間なんていとも簡単に変わってしまえるものなのですからね。
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そう、シューリヒトの偉いところは、まだ世の中はハース版や、下手をすればシャルク版を使うというのが当たり前の時代に、果敢にも「新しい」楽譜を用いて演奏したということなのではないでしょうか。事実、このような「商業録音」でノヴァーク版を使ったのは、シューリヒトがほとんど初めてのはずです。
ただ、細かく聴いてみると、ところどころでちょっと変なことをやっています。第3楽章の160小節目では、ヴァイオリン・ソロの最後に、ノヴァーク版では削除された「第1稿」に由来するフレーズを復活させていますし、第4楽章の「O」と「P」の間も、ノヴァーク版では丸々20小節がカットされて、その代わりに4小節の「つなぎ」入っているのですが、シューリヒトはその4小節をカットしているのですね。やはり、今まで使っていたものと比べて、どうしても直したい、というところを「修理」せざるをえなかったのでしょうか。まさに「修理人(ひと)」。
この演奏の特徴は、とにかくテンポが速いことです。なんせ全曲が71分、まるまる1枚のCDに収まってしまいます。それは、3楽章まではそんなに速いという感じはしないのですが、フィナーレになるといくらなんでも、という気になってしまいます。このSACDでは4'04"から始まっている第3主題などは特に速め、まだブルックナーの演奏そのものが少なかった当時なら仕方がありませんが、ほかの選択肢がいくらでもある今となっては、ちょっとこれではブルックナーの神髄は味わえないな、という気になってしまいます。
もう1点、このSACDは確かにCDよりははるかに深みのある音に変わっていますが、金管のトゥッティなどでは何とも安っぽい響きしか聴こえないのが気になります。というのも、同じパッケージに入っている「9番」では、録音はその2年前なのに、そのような安っぽさが全く感じられない、本当に素晴らしい音が聴けるからです。バランス・エンジニアの名前も、「9番」ではちゃんとフランシス・ディルナットがクレジットされていますが、「8番」には何もありません。これが「9番」並みの音であったなら、もう少し印象も変わっていたことでしょう。

SACD Artwork © EMI Records Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2012-06-08 20:56 | オーケストラ | Comments(2)
Commented by 通利菅朗 at 2012-06-21 01:28 x
一応「大変権威のあるブルックナーのサイト」の弁護をします
と、シューリヒト&ウィーンフィルの楽譜は「細かい音形はハース版、しかし全体はノーヴァク版風にカットしたもの」です 。このシューリヒトの「解釈」については,昔からブルックナーマニアの間で問題にされておりました (北ドイツ放送響とのライヴ (Music and Arts で出ています) では純正ハース版です)。
Commented by jurassic_oyaji at 2012-06-21 08:31
確かに、唐突なカットは有名ですね。こういうものを「ノヴァーク版」としたくなかったこのサイトの気持ちは、分からないでもありません。