おやぢの部屋2
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Bach in Jazz
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Martin Petzold(Ten)
Stephan König(Pf)
Thomas Stahr(Bass)
Wieland Götze(Drums)
RONDEAU/ROP6048




バッハをジャズで演奏するというアイディアは昔からありました。なんでも、その最も早いものは、1937年ごろのジャンゴ・ラインハルトとステファン・グラッペリの演奏なんだそうですね。
最近になって、「キングズ・シンガーズ」が「クリスマス・オラトリオ」をジャズのビッグ・バンドをバックに歌ったアルバムが出ましたが、これはそんな流れとは一味違った仕上がりを見せていたものです。そこではオリジナルをそのまま歌う「声楽」が、「ジャズ」とコラボレーションしていたのです。あるいはそんな甘っちょろいものではなく、まさに「異種格闘技」の様相を呈していたのかもしれません。
今回も同じようなアプローチ、ここでは、このレーベルではおなじみのテノール、マルティン・ペツォルトがその「声楽」パートを担っています。まずは喉を滑らかにして(それは「トローチ」)。幼少のころからバッハゆかりのトマス教会聖歌隊で活躍、どっぷりバッハの世界に身を置いていたペツォルトが、このアルバムで「ジャズ」と対峙する時の意気込みは、このジャケットを見るだけで分かります。彼が手にしているのは、ブライトコプフ版のカンタータの楽譜のはず。
一方の「ジャズ」サイドは、ライプツィヒのピアニスト、シュテファン・ケーニッヒを中心とするトリオです。ベースのトーマス・シュタールという人は、ウッド・ベースだけでなく、6弦のエレキ・ベースも弾いてます。
アレンジはケーニッヒですが、選曲は誰が行ったのでしょう。最初と最後こそ、カンタータ第147番というベタなところが扱われていますが、ここではかなりマニアックな曲が選ばれているのが、興味をひきます。まずは「マタイ受難曲」の35番のアリアが、その前のレシタティーヴォとともに歌われます。前奏がかなりジャズっぽく自由にテーマを引き延ばしていますが、テノールが入ってくると、オリジナルのベースのオスティナートがそのままキレの良いエレキ・ベースで演奏されます。そこに絡むピアノも、なにか「バッハ」という雰囲気をたたえているのが面白いところ、まずは肩慣らしにあまりヘンなことはしないでおこう、というスタンスでしょうか。
しかし、次の曲は、なんと「ヨハネ受難曲」の「第2稿」だけで使われている13IIというアリアです。渋いですね。この曲はおよそバッハらしからぬドラマティックなテイスト満載ですから、「ジャズ化」のしがいもあったのでしょう。イントロからしてハイテンション、アリアの流れを中断してのエレキ・ベースのソロも、とことんパワフルに迫ります。
面白かったのは、カンタータ第26番のアリア。と言われてもどんな曲だかすぐ分かる人はなかなかいないはずですが、オリジナルはフルートとヴァイオリンのオブリガートが加わった、6/8拍子のとても快活な曲です。ちょっと「ヨハネ受難曲」の9番のソプラノのアリアに似ていますね。もちろんバッハの場合は、普通に十六分音符6個を1拍と数えて6+6の2拍子になっているのですが、ここでのケーニッヒのアレンジのプランは、これを前半は3+3、後半は2+2+2の「ヘミオレ」にして、「チャチャチャ・チャチャチャ・チャー・チャー・チャー」という、まるでバーンスタインが「ウェストサイド・ストーリー」の「アメリカ」で使ったようなリズムで押し通すというものでした。実はバッハ自身もこの「ヘミオレ」はいたるところで使っているのですが、これはその「拡大解釈」といった趣、バッハが内包していたリズムを現代風に置き換えたというかなりショッキングなアレンジでした。
しかし、このプランは、そういうリズムの中で、ペツォルトがあくまでもきちんとしたビートをキープしていればこそ、生きてくるものなのに、そのペツォルトがいかにも及び腰なのがちょっと残念、というかかわいそう。声もなんだか本調子ではないようですし、やはりこういう企画は難しいものがあることを再確認です。意気込みだけではなかなか。

CD Artwork © Rondeau Production GmbH
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by jurassic_oyaji | 2012-06-10 20:55 | ポップス | Comments(0)