おやぢの部屋2
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BACH/Motetes
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John Eliot Gardiner/
Monteverdi Choir
SDG/SDG 716




ガーディナー夫妻のレーベル「Soli Deo Gloria」は、ジャケットのアートワークがぶっ飛んだセンスで楽しませてくれます。ブラームスでは油絵の一部だけを切り取った写真ですし、バッハのカンタータでは、「バッハ」にも「カンタータ」にも全く結びつかない、「民族的」な顔立ちと衣装の人々のポートレートなのですからね。そのような「シリーズ」をなしていないものも、正直意味不明の写真が、聴き手の前に立ちはだかります。去年聴いた「ヨハネ」では、電柱と電線(電話線?)のようなモノクロの写真が使われていましたね。まあ、確かにこの荒涼とした風景は、その演奏に見事にリンクしてはいたのですが。
そして、この最新のアルバムでは、「綱渡り」の芸人の写真です。「綱」つながりで来ているのでしょうか。次はどんなものが登場するのか、楽しみになっては来ませんか?
今回はバッハの「モテット」が取り上げられています。ガーディナーがこの曲を録音したのは1982年以来なのだそうです。その頃ガーディナーとモンテヴェルディ合唱団が録音していたレーベルは、すでにWARNERの傘下にあったERATOでしたね(その後、さらに別のレーベルへと移ったのち、自分のレーベルへ落ち着くのですが、それはまさに、大レーベルが「クラシック」を見捨てる歴史と合致しています)。その時には、「モテット」はBWV225からBWV231までの7曲と、カンタータBWV50BWV118の2曲が2枚のLPに収録されていました。それから30年、2011年のライブ録音の時には、「モテット」はBWV230までの6曲、それに最近はよくカップリングされるBWV159を加えた7曲になっていました。そこに、チェロ、コントラバス、ファゴット、オルガンの通奏低音が加わります。
この前の「ヨハネ」の演奏はとても衝撃的でしたから、ここでもある程度の「覚悟」はしていたつもりでした。しかし、聴こえてきたものは、さらにワンランク上の衝撃でした。「モテット」は低音の楽器の助けはあるものの、本体は合唱だけ、ソリストなどもほとんど登場しませんからそこではもろにこのものすごい合唱の力量が発揮されることになります。それは、まるで背筋が寒くなるほどの体験です。
まず、それぞれの声部が発する旋律線の動きが、尋常ではありません。それは、ただの音符の並びなどではなく、しっかりとそれぞれの音の間が有機的な意味を持って結合されているものでした。歌詞がある部分ではカタコトのドイツ語しか分からないものでさえその意味が理解できるほどの、まるでテレパシーでも発しているかのようなメッセージが伝わってきます。メリスマでさえ、その音のベクトルが確かな意味を主張しています。そんな多くの声部が、まるで生き物のように絡まって迫ってくるさまを想像してみてくださいな。もう、そこは「音」と「言葉」が人間の発声機能を通じて「音楽」そのものを伝えたいと願って、聴く者の脳に直接働きかける、極めて高度なコミュニケーションの場と化しています。
そんなポリフォニーの場面から、いきなりホモフォニーに変わったりすれば、今までの刺激的な場面は瞬時に安らぎに満ちた世界となります。そこでは、ふっくらとした和声を借りて、すべての声部が同時に、別の次元のメッセージを届けてくれることでしょう。そんな緊張と弛緩の狭間からは、すでに「合唱団」の姿などは消え去っています。そこにあるのは確実に耳に届いてくる「音楽」だけです。
こんな「モテット」を聴いていると、これを作ったとされる「ヨハン・セバスティアン・バッハ」という人物さえ、消え去ってしまう瞬間が訪れるかもしれません。卓越した作曲家と、奇跡的なスキルを備えた演奏家が届けてくれたものは、「神」が作った音楽だったのかもしれません。

CD Artwork © Monteverdi Productions Ltd
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by jurassic_oyaji | 2012-06-13 00:29 | 合唱 | Comments(2)
Commented by ななしのごんべい at 2012-06-18 23:49 x
このアルバムは良さそうですね。
他に購入したいものがでてきたら、某通販のマルチバイで購入したいと思います。
Commented by jurassic_oyaji at 2012-06-19 08:30
決して「平穏な」バッハではありませんが、お勧めです。