おやぢの部屋2
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ROREM/Chamber Music with Flute
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Fenwick Smith(Fl)
David Leisner(Guit)
Roland Thomas(Vc)
Mihae Lee(Pf)
Ann Hobson Pilot(Hp)
NAXOS/8.559674




1978年にボストン交響楽団に入団したフェンウィック・スミスは、2006年に28年の「勤務」を終えて、このオーケストラを引退しました。日本のオーケストラでは定年は60歳のようですが、アメリカの場合はどうなのでしょう。シカゴ交響楽団の首席奏者だったドナルド・ペックの場合は、たしか70歳ぐらいまで現役だったような気がするのですが(「嘱託」という場合もありますが)。仮に2006年に60歳だとすると、現在は66歳でしょうか、まあ、風貌に合致する年代のような気はします。というか、この人は昔から「年寄顔」でしたから、逆にまだこんな年だったのか、なんて思ってしまいます。
このアルバムは、以前、1993年にETCETERAからリリースされたものに、新しく2008年に録音されたものを加えてNAXOSから「アメリカン・クラシックス」シリーズの一環として新装発売されたものです。このレーベルではよくほかのレーベルからの「移行」という形でリイシューを行うことがありますが、こんな風に「ひと品余計に」つけてもらえるのはありがたいことです。
ゴーベールやケックランといった渋い作曲家のフルート曲を積極的に録音してくれていたスミスが、ここでは1923年生まれの現代アメリカの重鎮作曲家、ネッド・ローレムの作品を演奏しています。ローレムと言えば、一部の人にはあのビートルズに対して「マッカートニーとレノンは、シューベルト以降最高の歌曲作曲家だ」という、なんとも中途半端な「賛辞」を送ったことによってのみ知られている人ですが、その作品はオペラから歌曲まで多岐にわたっています。フルートのための作品は、以前こちらで、このアルバムにも入っている「Four Prayers」を聴いたことがありましたが、その他は、いったいどのようなものなのでしょうか。
最初に入っているのが、思い切り初期、1949年に作られた「Mountain Song」です。フルートとピアノという編成ですが、実際には、この曲はフルートだけではなくオーボエやヴァイオリン、さらにはチェロのためのバージョンも出版されています。要は、楽器の特性にこだわらない、アメリカ民謡由来のおおらかなメロディが聴ける美しい曲です。ただ、流れるようなソロのパートとは裏腹に、ピアノ伴奏が何やらジャズの即興演奏のような複雑なものになっているあたりが、もしかしたらこの作曲家の「個性」なのかもしれません。
そんな予感は、続く「Romeo and Juliet」という、1977年に作られたフルートとギターのための作品や、1960年の「フルート、チェロ、ピアノのためのトリオ」を聴いてみると、正しかったことがわかります。ここではフルート自体も、メロディアスなものから12音っぽい薄気味悪いもの、さらにはまるでヴァレーズの「Density 21.5」みたいな「前衛的」なテイストまで、恐ろしく振幅の大きな音楽が展開されています。もちろん、相方の楽器も、時にはアンサンブルさえも無視したような演奏を強いられる場面もあったりしますから、かなりの予測不能でスリリングな体験が味わえますよ。
そういう意味では、「ロメ・ジュリ」同様、イングリット・ディングフェルダーのために書かれた1975年の作品、フルートとハープのための「Book of Hours」は、まさに聴きごたえ満載です。1日の時間の移り変わりを8曲の小品で描いたものなのでしょうが、それぞれ油断できない曲ばかり、特に4曲目の「Terce(Mid-morning)」は、まるでメシアンのような鳥の声の描写が、超絶技巧でフィーチャーされています。
今回新たに録音されたのが、2006年の作品である、さっきの「Four Prayers」です。晩年になって枯れるどころか、その「意外性」はますます盛んになっていて、ここでもフラッター・タンギングを駆使しての「メシアン風」が冴えてます。
スミスの芯のある音は、こんな作風にはうってつけ、最初から最後まで素晴らしい演奏を聴かせてくれています。「引退後」に録音された最後の曲でも、衰えは全く感じられません。こんな風にいんたい(いきたい)ものです。
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by jurassic_oyaji | 2012-06-16 20:18 | フルート | Comments(0)