おやぢの部屋2
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SCHNITTKE/Zwölf Bußverse, Stimmen der Natur
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Marcus Creed/
SWR Vokalensemble Stuttgart
HÄNSSLER/SACD 93.281(hybrid SACD)




クリードとSWRヴォーカルアンサンブルのアルバムは、かたくなに同じデザインのジャケットにこだわっていますね。必要最小限のテキストが表示されているだけのとてもシンプルなものですが、アルバムごとにベースの色だけは変えるという、なんとも粋なやり方です。今回のシュニトケでは、さらに左上にあまり見かけないロゴマークが入っています。そう、これはSACDのロゴ、このレーベルでは本当にたまにしかお目にかかれませんから、これは貴重です。
シュニトケの合唱曲と言えば、「合唱のためのコンチェルト」や「レクイエム」が有名ですが、これはちょっと珍しい「12の悔悟詩編」と「自然の声」です。しかし、別に今回が初録音ではなく、1996年に同じカップリングでパルクマン指揮のデンマーク国立放送合唱団によって録音されたCDCHANDOS/CHAN 9480)が最初のものになります。
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1988年に作られた「悔悟詩篇」は、テキストに16世紀後半の古代ロシア語が用いられた、まるでロシア正教の聖歌のような厳かさをたたえた曲集です。そもそも1曲目などは男声のみで歌われていますから、いかにもロシア的な、ほとんど「ロシア民謡byドン・コサック合唱団」のような世界が広がります。
しかし、シュニトケが目指したのは、もちろんそんな単純なものではありません。彼の和声はいつものようにアイロニーがたんまりこめられた、一筋縄ではいかない複雑なものです。とは言っても、得体のしれない混沌の中から、突き刺すようなソプラノに先導されて輝くばかりの長三和音が現れる瞬間は、ごく自然に感情の高まりを覚えてしまうほどの感覚的な喜びが味わえることは間違いありません。そんな快楽に身を委ねることが、第一義的なこの曲の魅力なのかもしれません。ア・カペラの圧倒的な響きに、しばし酔いしれてはみませんか?
しかし、その長三和音には、必ず「醤油を一滴」みたいな「隠し味」の音が調理されていますから、油断は禁物ですよ。決してペンデレツキのようにノーテンキにはなれないのが、この作曲家の性なのでしょう。もちろん、それが作品を深みのある味に仕上げているのは、まぎれもない事実です。
最後の第12曲目は、テキストが無く、ハミングやヴォカリーズだけで歌われます。脂ぎったコース料理のシメにはさわやかなデザート、といった趣でしょうか。ただし、これもただ甘いだけのスイーツを期待すると、足元をすくわれてしまいますから、ご用心。
もう1曲の「自然の声」は、10人の女声とビブラフォンのための、やはりテキストのない4分ほどの作品です。まるで、リゲティの「ルクス・エテルナ」か、マーラーの「アダージェット」のような雰囲気満載の、美しい曲、ビブラフォンのアクセントがたまりません。
初録音のCHANDOS盤はちょっと腰が引けた印象がありましたが、この合唱団はとことん「攻め」の姿勢で圧倒的な「力」を感じさせてくれます。なんと言っても、ちょっと荒目の声のソプラノが、ノン・ビブラートでリードしているのが、最大の勝因でしょう。デンマークの女声は、ほのかにビブラートがかかって、なよなよしすぎです。
それと同時に、なんといっても録音の違いが決定的に影響を及ぼしています。無伴奏の合唱ほど、録音の難しいものはありませんが、CHANDOS盤ではやはりそれを克服することができず、肝心の盛り上がりで音がかなり歪んでしまっています。しかし、こちらでは、SACDのスペックを最大限に生かした生々しい音を聴くことができます。正直、ここまでリアリティのある合唱が録音で聴けるのは、ほとんど奇跡です。「自然の声」では、10人それぞれの声がはっきり聴き分けられるほどです。もちろん、そんなものは同じディスクのCDレイヤーでは、決して味わうことはできません。
こういうのを聴いてしまうと、SACDのロゴがもっとゴロゴロ見られるような時代になってほしいと、願わずにはいられません。

SACD Artwork © SWR Media Services GmbH
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by jurassic_oyaji | 2012-06-18 20:06 | 合唱 | Comments(0)